世界初マルチモード搭載一眼、A-1
キヤノンが1978年発売したA-1は、AE-1に始まる同社Aシリーズ一眼レフの最高級機種。当時のAE(自動露出制御方式)といえば、シャッタースビード優先式か絞り優先式のどちらかのみ搭載しているのが一般的であったが、A-1はそのどちらも搭載したうえ、初の完全自動プログラム式AEも搭載する高度な電子カメラであった。
今でこそ1台のカメラに絞り優先、シャッター優先の各モードを搭載しているのは一般的なことだが、例えばニコンがこうしたマルチモード機を発売するまでには1983年のFAまで待たねばならず、本機A-1がいかに先進的な機種であったかが窺える。キヤノンではA-1より2年ほど前に発売されていたシャッター優先機AE-1がすでに大ヒットしており、共に本格的に電子式カメラが主流となる黎明期のモデルといえるだろう。
「カメラロボット」の異名を持つA-1は、完全デジタル制御による高度な電子カメラとして登場したが、機能のみならず例えばファインダー内情報が赤色LEDによるデジタル表示であったことも、それまでのメーター表示に比べ先進性をアピールするひとつのポイントとなったようだ。手持ちのカメラではCONTAX RTSⅡがこんな感じだが、RTSⅡが登場するのは4年後の1982年だ。
また全体的にはコンパクトな筐体でありながら、高級機らしい高い拡張性を持ち、モータードライブやワインダーが用意されていただけでなく、複数のAE対応オートスピードライトや数種類のフォーカシングスクリーンなど、システムとしての充実度も高い。外装は残念ながらプラスチック製となるが、仕上げがうまく安っぽさは感じられない。
マルチモードコマンドダイヤルの使い方
それでは各撮影モードの設定方法を見てみよう。撮影モードの切り替えはシャッターボタン横のレバーにて行う。レンズの絞り輪を「A」位置に合わせたうえでレバーをAv側に回すと絞り優先モードとなる。絞り値はレンズの絞り輪ではなく、ボディ側のダイヤルを回して設定するという、現在のカメラでは当たり前の機能をこの時代にいち早く取り入れている。
同じレバーをTv側に回すとシャッター優先モードとなる。シャッター速度の設定はやはりボディ側のダイヤルにて行う。しかしながら、今操作するとこのダイヤルは小さすぎてかなり回し辛く、機能としては新しいものであっただろうが使いやすさということで言えばまだまだ発展途上であったかもしれない。
この状態でシャッタースピードの位置を1000を越した「P」位置に合わせるとプログラムAEモードとなり、絞りもシャッタースピードもカメラが自動で判断する全自動モードとなる。ちなみに、レンズの絞り輪を「A」位置以外の数値に合わせるとマニュアルモードとなるが、マニュアルモードではファインダー内の表示とレンズ側の絞り値が連動しないので、頭で仕組みをわかっていてもなかなか使い辛い。素直にAEを使うほうがラクだし確実と思われる。
現在中古カメラ業界では、電子部品が故障してしまうと修理が困難となる電子式カメラは機械式カメラに比べて人気がいまひとつであることから、キヤノンならF-1がダントツの人気機種で、A-1やAE-1は比較的リーズナブルに入手できる。機械式カメラは機械の構造だけで動くので修理すれば半永久的に動くといわれているが、それならば逆にまだ動く個体が現存する今のうちに電子カメラの名機を手にしておくというのはいかがだろうか。
このご時世、なかなか外出もできず試し撮りの機会を逸しっぱなしであるが、試写レポートもなるべく早いうちにお届けしたい。
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