日独混血のM型ライカ、LEICA CLとは
ライカCL(ライツミノルタCL)は1973年、ドイツのライカ(ライツ)社と日本のミノルタ社が技術提携し開発・発売をしたレンジファインダーカメラである。日本で発売された本機は「ライツミノルタCL」と言い、海外で発売されたものはミノルタ銘が外れて「ライカCL」銘で発売されているが、商品名が違うだけで機能も全く同じものだ。
ライカといえば言わずと知れたドイツの高級カメラメーカーだが、そんなライカ社も1960年代当時、日本製の安くて性能も優秀な一眼レフカメラの台頭により苦戦を強いられ、ミノルタ社との提携でこれを乗り切ろうとした時代があった。設計はライカ社、製造技術の多くはミノルタ社が担当したこのカメラ「CL」は世界中で販売されたが、何かと制約の多いレンジファインダーカメラ自体の失速を覆すまでには至らず、ライカ社の経営はこの後急速に悪化することになる。
その後は「冬の時代」に突入し、ライカCLの生産も1975年には終了。ライカが復活するのは世界的に好景気となり趣味性の高いカメラが一定のステータスを持つようになる1980年代半ばになってからである。
しかしこうした経緯のおかげで、本来ライカ社だけでは誕生しえなかった小型Mマウントレンジファインダーカメラが生産されるに至ったのだから、経営の悪化もあながち悪いことばかりではなかったかもしれない。生産終了から30年以上経った現在も、本家M型ライカとは別の廉価版ライカとして本機は一定の人気を保っている。
私もレンジファインダーカメラといえばすでにCONTAX G1など所有しているが、やはりいつかはライカを持ってみたいという気持ちはカメラ好きなら誰しもが思うところだ。本来このカメラに合わせるべきレンズはミノルタ製Mロッコールだろうが、今回は標準レンズとしてフォクトレンダーのノクトン40mmF1.4を選んでいる。尚90mmレンズについてはミノルタロッコールを入手することができた。
LEICA CLの仕組みと使いかた
露出計のしくみ
CLの露出計はフィルム巻き上げ(チャージ)をするとボディ内部レンズ後方位置に出現し、レンズを通した光量を測光する。このとき、巻き上げレバーを少し(5度程度)ボディから離すと電源が入る仕組みである。まずはこれを知らないと、露出計の動作確認ができないので覚えておきたい。レンズ側の絞り値とボディ側のシャッタースピードを操作してファインダー内の指針が中央にくるように調整すればOKだ。
しかし、経年により露出計が壊れて不動となった個体も多い。その場合は勘と経験で露出を計っても良いが、お勧めは外部露出計を使う方法だ。写真はフォクトレンダーより発売されているVCメーターを装着した姿だが、もともと露出計を内蔵していないレンジファインダーカメラ向けに設計されているので、見た目の違和感もなく使い勝手もよい。幸いにして今回入手した個体は細かな精度はともかく露出計が作動したので、そのまま使わせてもらうことにした。
バッテリーについて
ライカCLは機械式カメラなので電池がなくても撮影は可能だが、内蔵する露出計を動かすために水銀電池H-D(MR-9)型1個が必要となる。このタイプの電池はすでに生産が完了していて現在入手不可能であるため、何らかの代替電池が必要となる。サイズ互換品の625型電池をAmazonなどで入手可能だが、以前私が他のカメラ用に購入したLR625Gという電池は使用後しばらくすると膨張し破裂してしまった。カメラから電池を抜いておいたので事なきを得たが、カメラ内部で破裂していたらどのようなダメージを受けていたかと思うと恐ろしくて人には勧め辛い。
コストはかかるが最も安全なのは、関東カメラサービス社が提供しているMR9アダプターに酸化銀電池SR43を装着して使う方法だ。これならサイズも合うし、SR43の電圧1.55Vが約1.35Vに変換されるので、よりオリジナルのMR-9に近い電圧で使用することが可能だ。尚ボタン電池としては最もメジャーなLR44だと百円ショップでも調達できて便利だが、LR系は電圧の変換がサポートされないのと、サイズ的に若干高さが嵩んで電池室にはまらないので、少し高いがちゃんとSR43を買ったほうが無難だ。
レンズとファインダーの関係性
CLがサポートしているのは40mm、50mm、90mmの3つの画角のみである。一眼レフを使い慣れているとレンズを交換すれば自動的にファインダーの視野角も変わるのであまり意識することもないが、レンジファインダーの場合はファインダーの見え方自体は変わらず、どの範囲が写るかを示すブライトフレームと呼ばれるガイドラインの表示が変わるのみとなる。こちらがデフォルト状態のファインダーだが、画角のフレームは40mmおよび50mmが表示されている。ちなみにマニュアルによると、画面一杯が35mm相当だそうなので、35mmを使うことも想定はしているのだろう。
90mmレンズを装着すると50mmフレームが消え、90mmフレームが登場する。しかしピントを合わせる二重像が表示されるのは中央部分だけだから、90mmの撮影を行う際はかなり狭い範囲でフレーミングとピント合わせを行わねばならない。ちなみに35mm以下の広角レンズを使いたい場合どうするかというと、別途外付けのビューファインダーをアクセサリーシューに装着し、フレーミングはそちらのビューファインダーで、ピント合わせはカメラ本体のファインダーもしくは目視で、ということになるので、使い勝手がよいとは言い難い。このあたりは実際に撮影してから別途使用感をレポートしよう。
尚、コニカミノルタ製品のアフターサービス請負先であるケンコートキナー社のHP上にライツミノルタCLのマニュアルが載っている(こちら)ので、こちらもあわせて確認しておきたい。
ライカCLは廉価版ライカという位置付けから、ともすると「ライカを使ってみたいが高価で手を出し辛いので、とりあえず購入できる価格帯のライカ」として少し下に見られがちではある。とはいえこれも正真正銘のMマウントライカ。しかも他のM型ライカよりコンパクトというアドバンテージもあることを忘れてはならない。ライカビギナーの最初の1台として使い倒してみれば、ひょっとしていつか本家M型ライカにたどり着いてしまうかもしれない。
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