ジャンクカメラの定番、ミノルタSR-T101を分解
ミノルタSR-T101は、1966年発売のミノルタ製一眼レフ。同時期に発売されたペンタックスSPと共に、60年代売れに売れた大ベストセラー機です。この時代の一眼レフは各社金属製ボディを採用していたため頑丈で、また露出計以外は電池が不要な機械式の機構を持っているため壊れても修理が可能な場合が多く、今でも動く個体は少なくありません。
リサイクルショップのジャンクカメラコーナーに転がっているカメラのうち、いわゆる電子カメラは基盤が壊れたら修理する術がありませんが、こうした機械式のカメラは直る見込みが残っています。個人的に本機ミノルタSR-T101は、修理できるかもしれない3大ジャンクカメラのひとつにカウントしています。あとふたつは何かって?ペンタックスSPとキャノンFTbですかね。
症状の確認
立ち寄ったハードオフのジャンク箱の中から、見込みのありそうなSR-T101を一台お持ち帰り後詳しくチェックしたところ、あるべきパーツがないことに気が付きました。
このカメラは露出計を内蔵しているので、ファインダー内右側で露出を示す針とシャッタースピードを示す〇印が重なったとき適正露出を得られているのがわかるという仕組みなのですが、露出針が見当たらないのです。
本来あるべき露出針を黄色く書き込んでみましたが、こんな感じの針が本当ならあるはずです。これがないとなると、露出計が生きていたとしても、適正値がわかりません。シャッターは正常に動いているようなので勿体ないです。これはもう分解して中身を確認しなければいけません。
軍艦部の取り外し
シャッター巻き上げレバー、フィルム巻き戻しクランクを外す
そうと決まれば早速分解をはじめましょう。まずは軍艦部プレートを外す必要がありますが、それには軍艦部に並んだパーツを外していかなければなりません。シャッター巻き上げレバーから外していきます。
ゴム製の吸盤オープナーなどをシャッターボタン周りのリングに押し付けながら回すと簡単に外れます。外れたパーツは順番に並べておくと組み立てる際に迷わなくて済みます。
次にフィルム巻き戻しクランク。これは他のカメラ同様、カメラ内部のフィルム巻き取りスプール部分を押さえながらクランク部を反時計回りに回せば外れます。
もうひとつ下のワッシャーを外します。内側に切れ目がありますので、ここに先端の細いペンチまたはカニ目レンチ等を充ててパーツを回します。
外れました。このワッシャーは軍艦部を外した直後にちょっと利用しますので、次の次の手順で説明します。
シャッタースピード/ASA設定ダイヤルを外す
次にシャッタースピード兼ASA設定ダイヤルを外します。あとで組み直す際に外した位置を再現することが重要になってきますので、シャッタースピードはバルブ(B)、ASAは最高値の6400にセットしてください。
ダイヤルを外す自体は写真の位置のネジを回すだけなので簡単です。
外れました。
このときの内部ギアの位置を覚えておきましょう。あとで組み直す際、外した文字プレート側の下部ボッチと、ボディ側の穴を正しく合わせられないと組み立ててもASAの設定ができなくなります。ここの組み直しは結構難しいと思いますが、何度失敗してもいいので落ち着いてトライしてください。
ここまでで外したパーツを並べておきました。なくさないようにしましょう。
軍艦部を外す
いよいよ軍艦部を外します。
写真の3か所のネジを外します。
続いてボディ正面のネジを外します。
実は本来この場所には赤い極小プレートが接着されていて、それを外さないとネジ目が出現しないのですが、今回入手した個体は最初から赤プレートが付いていませんでした。赤プレートが付いていた場合は、カッターナイフとアルコールまたは接着剤のはがし液などを使ってきれいに剥がしましょう。
軍艦部プレートが外れました。
このカメラが特殊なのは、なんとボディ内部に糸を張り巡らせ、この糸を物理的に巻き取ったり緩めたりすることでレンズの絞り値情報を伝達しているという点です。この糸を制御しているボディ左端のフィルム巻き取り部上部から糸が外れてしまうと、組み直すことは至難の業となりますので、脱線防止のために作業中は前々手順で外したワッシャーをここに取り付けておくことをお勧めします。
ファインダースクリーン部へアクセス
プリズムを外す
プリズムを固定してあるプレートを外します。
写真の位置のネジ2本を回します。
外れました。
プリズムを引き上げるようにして外します。プリズム周辺にはコードが張り巡っていますので、誤ってコードを断線しないように気を付けましょう。
欠損した露出表示メーター針を補填
ファインダースクリーンが見えました。
ここでスクリーンとファインダーの清掃をしてしまいましょう。
よく見ると、本来モルトが張ってあるべき場所がコルクのような素材で代替されていました。ということは、過去にもこの個体は分解されて、このような処置を受けていたということになります。
カメラに電池を入れて前面を光で照らすと、写真の矢印のパーツが動くことを確認しました。本来はこの場所に露出表示針が付いていたと思われますが、おそらく過去に分解された際、この針が折れてしまったのでしょう。せっかく露出計が生きていたのにこれでは露出の確認ができません。
一旦は諦めかけましたが、要するにここに針があればいいのだから、針の代わりになるものを補完したらいいのではと思い、そのへんにあった紙を適当に細くカットして、接着剤でくっつけてみました。
分解したパーツを組み直しファインダーを覗いたところ、くっつけた紙が光の強弱によって上下に動くようになりました。本当に適当にフリーハンドで紙をカットしたのでちょっと見栄えは悪いですが、機能としては何ら問題なさそうです。
ボディ下部のチェックと給油処理
ついでにボディの下部プレートを外して構造を確認しておきます。
下部プレートは矢印の2か所のネジを外せば簡単に外れます。
もともとシャッターは正常だったので、動きに特に問題はなさそうです。
ただ、写真左手の丸形電池ボックスの固定用ネジ穴が3個あるのに、そのうちのネジ1個で固定されているだけでした。これも過去に分解された時にネジの取付忘れがあったものと思われます。ファインダー内の針は折るわネジは付け忘れるわで、これを過去に分解した人は慎重さに欠けていたと言わざるを得ません。カメラはもっと丁寧に取り扱ってほしい。
一応クランクに少量の潤滑油を注油しておきました。カメラの注油はごくごく少量、がポイントです。専用の潤滑油は高価なので、私は針にミシン油を付けてパーツに移すようなかたちで行います。
概ねこんなところでしょうか。あとはモルトを張り替えればいけるんじゃないかと思います。実はこのカメラに適合するレンズがないので、これで実用になるかどうかは今後レンズを入手してからになります。ジャンクで1,000円で買ってきたカメラですけれども、撮影できるようになったら嬉しいですね。
使用した道具のご紹介
全12種の大きさで使えるゴム製オープナー。回して外すパーツにはこれが最も安全。
ピンセット代わりにもラジオペンチ代わりにもカニ目レンチ代わりにもなる万能プライヤ。軽い作業ならこれだけでいろいろ代替できて便利。
カメラ分解で使うマイナス精密ドライバはほぼこれ1本でOK。100均のちゃっちいやつの100倍使いやすいです。
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