PENTAX SPOTMATIC(SP)とはどんなカメラ?
PENTAX SPOTMATIC(以下SP)は1964年にペンタックス(当時の旭光学)が発売した35mm一眼レフカメラで、全世界で400万台以上を売り上げたというベストセラー機。よくこのカメラの紹介文として、「世界初のTTL露出計内蔵一眼レフ」と謳われることが多いのですが、正確に言えば世界初のTTL露出計内蔵一眼レフの「発売」は1963年のトプコンREスーパーです。
ただ本機PENTAX SPはその数年前、1960年にドイツのカメラ見本市であるフォトキナで開発中の試作機の発表をしていたため、発売順序は遅くなったけれども、まあ世界初のTTL露出計内蔵一眼レフの元祖と言ってもあながち間違いではないでしょう。
安価ながら絞り込み測光のTTL露出計を内蔵し、露出計内蔵一眼レフを一挙に一般的な存在としたPENTAX SPは、その人気の高さから一時は世界的に品薄状態になったとも言われています。当時は輸出品よりも日本国内の価格が安かったため、1966年のビートルズ武道館公演の際、ジョン・レノンやポール・マッカートニーもこぞって買い求めたという噂がまことしやかに囁かれています。
PENTAX SPの特徴・スペックなど
構造的には非常にスタンダードな機械式一眼レフで、基本的に頑丈で壊れる場所が少ないため今でも使える個体は多く、ジャンク一眼レフとしても市場に数多く出回っています。今回使用する個体も中古カメラ店でジャンクで500円だったものをセルフメンテナンスしたものです。
SPOTMATICという名が示すように、試作段階ではスポット測光方式でしたが、発売時にはより扱いやすい平均測光に変更されました。しかしネーミングはなぜかそのままSPOTMATICが維持されます。マウントは規格がオープンで当時世界中で採用されていたM42マウント。このとき使われたレンズ、TAKUMAR 55mm F1.8は、今ではM42マウントのオールドレンズの代名詞となっています。
使用において気を付けなければいけないのは、TTL露出計を内蔵しているとは言っても絞り込み測光のみ対応という点です。絞り込み測光とは、測光時に実際の絞りまで絞り込んで光量を計測する形式のことで、F値開放で測光する分には問題ありませんが、絞っていくにつれファインダーが暗くなってしまうため、絞れば絞るほどピントが合わせ辛くなるという構造上の問題があります。現在のカメラはほぼすべてが開放測光(絞り込んでもファインダーが暗くならない)となっていますので、不便と感じる場合もあるでしょう。
しかしながら、このカメラを使うということはレンズもオールドレンズを合わせるでしょうから、絞り込んで撮影するよりも開放付近で撮影するほうがオールドレンズらしい描写が楽しめると思いますので、そういう意味では大きな問題にはならないかもしれません。
PENTAX SPとタクマー55mmF1.8で実写
それでは実写をしてみましょう。レンズはM42マウントの代名詞ともいえるSMC TAKUMAR 55mmF1.8。タクマーシリーズの中では後期のモデルで、写りには定評があります。F5.6くらいまで絞り込むと、普通に良く写りますね。
細かいF値は忘れましたが、開放付近ではご覧のとおりよくボケます。子供にピントを合わせたほうがよかったかもしれませんが、これはこれで。
厳密にはピントが怪しいのですが、開放付近で撮影したためふんわりメルヘンチックな雰囲気を捕えることが出来ました。噂通り良く写るレンズのようです。
室内でも立体感のある絵に仕上がっています。
50mmという焦点距離は、風景を俯瞰的に撮ることもできるし、ピンポイントの一点を狙うこともできる万能な焦点距離ですが、このレンズの55mmはそれよりも少しだけクローズアップが狙えるという玄人好みの焦点距離です。
最短撮影距離も45cmなので、結構寄れます。
今回使った個体は露出計が動くには動きますが、経年のためちょっと反応値が怪しいというか、実際よりも暗めに反応してしまうようなので、ISO100のフィルムで設定を2段程度落として撮影しました。シーンによっては反応にばらつきもありましたが、ネガフィルムを使うぶんには大きな失敗はありませんでした。
ファインダーは視野率約93%、倍率約0.88倍と十分なスペックですし、非常にオーソドックスな一眼レフなので、余計な機能もなくただただ狙って撮るということに集中できるカメラという印象です。機械式のシャッターはメカを弄っている高揚感も感じられ、フィルム一眼の入門機としても強くお勧めできます。但し、1973年に発売された後継機のSPOTMATIC Fは開放測光に対応しているので、同じ値段ならそちらのほうが扱いやすいかもしれませんね。
楽しくてついたくさん撮ってしまったので次回、このカメラで撮影した他のショットもご紹介しましょう。
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