TRIP35のニコイチメンテナンスに挑戦
OLYMPUS TRIP35は1968年(昭和43年)発売のコンパクトフィルムカメラ。当時大ヒットしていたハーフカメラ、ペンEESをベースとした35mmフルサイズ機で、その描写力と故障の少なさ、価格の安さなどが評価されその後20年間にわたって生産されたベストセラーモデルである。
今回2台手元にあるわけだが、1台目は近所のリサイクルショップでジャンク箱からピックアップした個体である。店頭でチェック時、明るさとは無関係にシャッターが切れたり切れなかったりしており、故障品ということはわかっていたものの、研究用に入手しておいたものだ。2台目はその後某巨大フリマアプリで現状品で格安出品されていた個体を落札したもの。こちらは出品者のコメントで「暗い場所ではシャッターが切れず、明るい場所だとシャッターが切れる」ということで、正常稼働している可能性が高かった。それぞれ、状態を詳しく確認していこう。
ジャンク箱から拾った1台目の状態確認
TRIP35はプログラムオート専用機であるが、露出とシャッタースピードを決定するのに電池を必要とせず、明るさによって動作を制御するセレンと呼ばれる機構を採用している。セレンさえ生きていれば復活の可能性はあるが、逆を言えばセレンが死んでいたら復旧はほぼ不可能である。セレン機構を採用したカメラの多くは、光に反応して動くメーターがファインダー内などに見えるものが多いが、TRIP35はメーターが完全にボディ内に隠れてしまっているため、これを確認するには解体が必須となる。ボディ軍艦部を開けるには、フィルム巻き上げレバーを外した下部にネジが2本見えるので、これと軍艦部の反対側側面にあるネジを外そう。
軍艦部の内側にはフラッシュ接点と本体を繋ぐ配線があるので、注意しながらゆっくり開けていく。
ファインダー横にメーター針が見えるのがおわかりだろうか。本来なら、レンズ部をぐるっと取り囲むように配置されているセレン受光部に光を照らすことでこのメーターが反応し動く構造になっている。しかしこの個体は、どれだけ光をあててもメーターはびくともしない。セレン受光部とメーターを繋ぐ配線が断線しているだけという可能性もなくはないが、高確率でセレンが死んでいると思って間違いなさそうだ。
フリマで落札した2台目の状態確認
2台目の個体も同じようにチェックしてみたところ、メーターが稼働することが確認できた。こちらの個体は分解前に少し弄ってみたところ、暗いところではファインダー内に警告表示される通称「赤ベロ」と呼ばれる機構も正常に稼働していたので、分解せずとも正常であろうことは目星がついていた。
軍艦部を外した時点で、シャッターボタン周りの配線が延長された形跡があったので、おそらく以前誰かが分解してメンテナンスを行ったことのある個体であろう。ついでにファインダー内側を綿棒で軽く清掃しておいた。
2台のパーツを組み換え
こちらの個体で気になるのはボディ底面プレートに文字が彫られ、それを消すために更にプレートを傷つけた痕跡が残っている点だ。底面なのであまり目には触れないかもしれないが、やはり気になってしまう。
そこで1台目の個体と底面のプレート部のみ取り換えることにした。ここの取り外しはネジを2本外すだけなので特に難しいことはない。完全ジャンク認定された1台目の個体も部品取りとして役に立った。
案の定モルトは劣化してぼろぼろであったので、例によって新しいものに貼り直した。TRIP35のモルト張り替えキットがAki-Asahiドットコムで販売されているのでこれを使ってもいいが、本来このカメラに必要なモルトは仕様としてボディ裏蓋のヒンジ部分だけなので、わざわざキットを買わなくても汎用のモルトシートを持っているなら適当にカットして使ったほうが経済的だ。もし実写後光線漏れを起こしているようであれば再度補強しようと思う。
ボディを全体的に清掃してメンテナンス完了。うっすらと曇って見えたファインダーもきれいに見えるようになった。世の中的にはまだまだ気軽に外出することも憚られるが、実写レポートは追って近日中にお届けしよう。
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