GR伝説の祖R1の改良機、”R1S”とは
私も愛用する「最強のスナップシューター」として評価の高いリコーGRのシリーズ初号機が発売されたのは1996年。遡ること2年前の1994年、のちのGRへと繋がる超薄型フィルムカメラ「R1」が発売されている。これこそ、現在も続くGR伝説の幕開けとなった歴史的一台なのだ。
パトローネ入りフィルムを使う35ミリカメラでは、物理的にパトローネ直径約30mmより薄いカメラをつくることは困難であったが、パトローネ収納部をボディグリップと一体化することで、このグリップ部を除いたボディ奥行きを25mmとすることに成功した。この超薄型ボディに採光式フレームファインダーと30mmF3.5レンズを搭載し、圧倒的にコンパクトなフィルムカメラとしてデビューしたのがR1である。
この「薄さ」だけでも十分にインパクトのあるカメラだが、もう一つのギミックが当時流行っていたパノラマモードにワイドコンバージョンレンズを加えることで画角24mmを実現していること。当時パノラマモードといえば、画面の上下をマスキングし縦横比を細長くすることで疑似的に広角風に見せるものが主流であったが、R1に搭載された「ワイドパノラマモード」では上下のマスキングはあるものの、本当に画角が30mmから24mmに変化するもので、コンパクトカメラに搭載された広角端としては他に類を見ない「本物の」超広角であった。R1のワイドパノラマモードは周辺部のボケが大きく減光が激しかったが、これを改良したのが本機R1Sとなる。
たまたま所有している1998年発売のGR10と並べてみるとほぼ同じサイズだが、実はわずかにR1Sのほうが小さい。ボディ材質はGR10はアルミニウム製だが、R1Sはプラスチック製でありややチープな印象となるが、ボディが渋めのクラシカルな色合いでこれはこれで悪くない。
定番改造、パノラマモードのフルサイズ化
さて、R1Sには24mmのパノラマモードが搭載されていることはすでに述べたが、パノラマモードにするとカメラ内部で遮光板が出現し、これにより物理的に画面上下一部がマスキングされてしまう。これはパノラマモードで発生する周辺ボケと減光部分を隠すためと思われるが、せっかくの24mm画角が35mmフルサイズで記録されないのは勿体ないというので、当時マニアの間ではこの遮光板が起動しなくなるプチ改造を施すのが流行った。
こうした状況を踏まえ、私も24mmフルサイズ化の改造を行うことにした。改造と言っても難しいことはなく、写真の位置に適当な厚さの厚紙を詰め込むだけだ。うまく詰め込むと遮光板が動けなくなるので、ワイドパノラマモードにしてもマスキングがかかることはなくなる。この方法なら元に戻したくなったら詰めた厚紙を除去すればいいだけなので、リスクも少ない。但し、これによって稼働構造に負荷がかかり部品の変形などが起こらないとも限らないので、改造行為を行う際は自己責任ということを忘れてはならない。
ついでに経年により劣化していたモルトを貼り直しておいたが、後に判明するのだが上記改造を行ってしまうと、30mmで撮影するぶんにはともかく、24mmワイドパノラマモードで撮影した際にこの窓から光源漏れを起こしてしまう場合があるようだ。この現象については現在検証中となるので、正確なことが判明したらまた改めてレポートしようと思う。
では通常モードとワイドパノラマモードの画角の違いを見てみよう。
こちらが通常モードで撮影したもの。
こちらが同じ場所からワイドパノラマモードで撮影したものだ。確かにだいぶ広角に撮れているのがわかる。写真はフィルムデュープしデジタルデータ化後、Photoshopで階調反転をしたうえでLightroomで調整を行っているが、四隅が急激に減光しているほか、周辺部がかなりボケている。尚、通常モードのほうのショットで画面右端が変色しているが、これは光線漏れによるものだろう。
個人的にはフィルムコンパクトカメラでここまで撮れるなら十分面白いと思うが、これが実用範囲内と捉えるかどうかは人によるかもしれない。次回、実写編では他のサンプルショットも大量投下しようと思う。
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