大ヒットCanonetシリーズ後期モデル”QL17-L”とは
Canonet(キャノネット)は創業以来高級35mmカメラを手掛けて来たキヤノンが、1961年レンズシャッター式の中級35mmカメラの分野に参入した最初の機種。シャッターを押すだけで綺麗に写る完全自動露出のシャッタースピード優先式EE機ながら、明るいレンズとリーズナブルな価格が支持され、シリーズは2年半で出荷100万台を超える大ヒットとなった。
本機ニューキャノネットQL17-Lは小型・軽量化のニーズに応えて1969年から発売されたシリーズ第2世代中の1機種で、ボディ幅が約20mm、高さが約4mm減少し、重さは約30%軽減化している。その後1972年には第3世代のGⅢが発売され11年間にわたるロングセラーとなるが、その後時代はオートフォーカスへシフトすることとなり、シリーズは終焉を迎えた。
今回某カメラ店のジャンクコーナーで出会った個体は、レンズやファインダーを含め全体的にスレや汚れが見られたが、とりあえず可動部分は固着しておらずシャッターを切ることは出来た。実はこの機種、絞りとシャッタースピードを両方手動で設定するフルマニュアル機としても使用することが出来る為、シャッターが切れただけでは露出計が生きているかどうかがわからない。露出計が動かなければ、シャッタースピード優先のオート撮影ができないので、価値が半減してしまう。
このカメラで使用する電池はMR9といって、現在は生産されていないばかりか同じ大きさの電池も存在せず、店頭で通電可能かどうかの確認ができなかったためその場で購入を決めるのは賭けであったが、持ち帰ってアダプター経由で電源を入れてみたところ無事露出計が動いた。ひと通り動作確認をしてみたが、どうやら動作自体に異常はないようである。
復活のポイントは清掃だが露出計の動作チェックは必須
機能に問題がないのであれば、この手のカメラのリペアポイントは「清掃」だ。清掃をするにはどこまで分解できるかがカギとなる。レンズは汚れていたが、前玉と後玉を外側から無水エタノールで拭いてみるとかなり綺麗になった為、無理にこれ以上の分解をせず一旦よしとした。問題はファインダーで、かなり曇っていて視界が悪くこのままでは実用にならない。軍艦部を分解してファインダー内部を清掃してみよう。
①軍艦部の取り外し
軍艦部を取り外すにはまずフイルム巻き上げレバーを解体する必要がある。レバー上部にゴム製のレンズオープナー等を押し付けて半時計方向に回すと、ワッシャー状の金具を外すことが出来る。
金具が外れた。
巻き上げレバー部のパーツを順番に外していく。外したパーツは順番通りに並べておくと、組み立て時に迷わなくて済む。
フイルム巻取りレバーはどのカメラもだいたい一緒だが、内部の巻取り棒をラジオペンチ等で動かないように抑えながら上部レバーを反時計方向にまわすことで外れる。ここのパーツも外した後はきちんと並べておこう。
この状態で左右と中央部にあるネジを精密ドライバーで外すと軍艦部が外れる。このカメラは軍艦部とボディ本体が配線等で繋がっていないので外すのはラクだ。
②ファインダーの清掃
ファインダー部を覆っている金属製の蓋を外す。このパーツは一部がボディ側に接着されているので、カッターナイフの刃などを隙間に入れて剥がしてしまおう。
Z型のファインダー内部が現れた。前後のガラスパーツは無水エタノールで容赦なく清掃する。中間のハーフミラーは強く拭いてしまうとピント合わせに必要な二重像がなくなってしまうようなので、ここはごく軽く乾拭きのみ。ちなみに外した軍艦部側にも覗き窓があるので、こちらもあわせて清掃しておこう。これだけで劇的に視界がすっきりした。
③モルト張り替え
モルトはほぼ剥がれてしまっていたので、全面的に張り替えることにした。レンズ部分をマスキングテープで養成し、フィルム室の清掃がてら剥がれてしまったモルトを綺麗に除去する。
このくらいになるまで根気よく清掃し、
新しいモルトを貼り付けた。ちなみにモルトは汎用の1mm厚モルトシートを自分でカットしてあてがっている。
ちなみに電池はLR44またはSR44をMR9大に変換するアダプターを別途購入している。このアダプターは2~3千円と少々コストが嵩むが、1個買っておけばこのカメラ以外にも使うことが出来るので長い目で見ればコストも回収できるだろう。
今回は幸運にも稼働品にめぐり合えたのでそれほど複雑な作業を要さずに復活できた。実写レポートはまた近日中にお届けしよう。
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