ジャンクのCONTAXを復活させてみよう
CONTAXといえば独カール・ツァイスが1974年、日本のカメラメーカーヤシカとブランド等に関するライセンス契約を締結し、以後ヤシカの中でも高級機種に付けられたブランドである。1983年ヤシカは京セラに吸収合併され、コンタックスブランドも同社へ引き継がれたが、2005年京セラはコンタックスを含むカメラ事業から撤退することとなり、現在に至るまでコンタックスブランドは休眠状態となっている。
先日某巨大フリマアプリでプラナー50mmF1.4とセットでジャンク販売されていた為、レンズ目当てでこれを購入した。レンズのほうはともかくとして、元々ジャンク販売だったボディは動作未確認品であり、見た目もご覧の通りの有様である。しかしせっかくのCONTAXボディだ。メンテナンスすれば何とかなるかもしれない。
メンテナンスのポイントは「清掃」。だが・・・
フィルムカメラのリペアのセオリーはまずは清掃であるが、CONTAX 137MA QUARTZは発売が1982年の電子カメラ。稼働に電池を必要としない機械式のカメラならば分解・清掃だけで何とかなっても、電池で動く電子式カメラの場合は電子部品が壊れていたら修復は極めて困難だ。
そこでまずは電池をセットして動くかどうか試してみたところ、電源が入り、シャッターが切れることを確認した。明るさに応じてシャッタースピードも変化しているようだ。セルフタイマーもOK。これなら何とかなるかもしれない。
①貼り革を剥がしとにかく清掃
まずはボロボロになった貼り革を丁寧に剥がし、外装を無水エタノールで清掃する。フォーカシングスクリーンは取り外すことが出来ないので、綿棒で届く部分のみ拭き取る。その他あちこちひっくり返してひと通り清掃が終わって、気付くと何に使われていたのかわからない直径5ミリくらいのワッシャー上のパーツが落ちていた。元の場所がわからず、ひとまず保管することにする。
②モルトの張り替え
裏蓋とフイルム室はさほど汚れていなかったが、モルトは案の定劣化していたので、こちらも除去し新しいものに張り替えた。モルトの交換に関してはもう何台も手掛けたのでだいぶ慣れてきた。
綺麗になったので試しにレンズを装着してファインダーを覗いてみる。掃除の甲斐あってかなりクリアに見えるようになった・・・のだが、ピントリングを回していて妙なことに気付いた。無限遠でピントが合わない。近距離も、レンズの距離表示と実際の距離があきらかに違っている。
③無限遠が出ない原因を特定
いわゆるピントずれの現象だ。レンズは別のボディでは無限遠が出ているので、原因はボディ側にありそうだった。まず疑ったのは「ミラーずれ」の症状である。これはCONTAXボディにはよくある持病で、ミラーを固定している接着剤の劣化により位置がずれ落ちてしまうもので、この場合ミラーとファインダーの距離が変わってしまうのでピントが合わなくなる。しかしこの個体は見たところミラーずれは起こしていないようであった。
原因がわからず数日放置した後、清掃の時に落ちていた小さなワッシャー状のパーツがあったことをふいに思い出した。これ、ひょっとしたらミラーの位置決めのパーツだったのではないだろうか。ミラーを手でアップさせ、ミラーが閉じた時の抑えの突起部分にこれをあてがってみると、サイズもぴったり。この状態でレンズを装着してみたところ、無事無限遠が出るではないか。捨てないでおいて本当によかった。こんな小さなパーツの有り無しでピントが狂うのだから、フィルムカメラもなかなか奥が深い。
④新しい貼り革を貼り付け
機能的に問題ないところまで回復したので、ボディ貼り革を新しいものに替えることにした。フイルムカメラの替え貼り革と言えばおよそどんなカメラ用の貼り革でも揃うAki-Asahi.com様より、137MD/MA用貼り革キットをお取り寄せした。明確な説明はないのだが、指定した本革製黒色の他もうひとつ練習用のものがふたつセットで届くようで、それならもうちょっと普通のデザインのがよかったのだが、とにかく写真の2種類の商品が届いた。
貼り替え方法はwebサイトのほうに写真付きで解説ページがあり、なかなか親切だ。練習用の貼り革は使わずにぶっつけ本番でやってみたところ、少し革にキズを付けてしまった。多少コツが要るので、めんどくさがらずに一度練習をしてから本番に臨んだ方がよかったと少し後悔した。
こうしてジャンクの137MAは見事に復活を遂げた。このカメラ、重量が610グラムとワインダー内蔵という点を考慮すればむしろ軽量な方かと思っていたが、バッテリーが単三電池4本なので結局700グラム程度となり、重い重いと言われたRTSとあまり変わらない。レンズを装着すると1キロ級となるので、軽快に持ち出すというよりもじっくり腰を据えて撮影に臨むのがいいかもしれない。実写レポートはまた後日お届けしよう。
コメント
コメント一覧 (4件)
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こんにちは。初めてお便りさせていただきます。65歳になりました。
35年前にプラナーF1.4とで同機種を新規購入して、ボケ味など喜んでうれしくて多用しておりました。15年ほど前、モルト不良から遠のいていました。それからデジタルカメラに移行していました。どうとでもなるデジタルデータはカメラメーカーのプログラムで最適と判断された代物で、ユーザーはその場に遭遇してスイッチをただ操作する存在だけになってしまいました。ユーザーはとんでもなく広がり、そして、アナログフィルムは絶滅危惧されるような昨今になりました。
こんな時、知人がFacebookで、地顔をディズニー顔にして披露してくれました。
これが決定打になりました。ディスプレーできれいすぎる発色、ピントや絞りの選択も何も手を煩わさず、すべて(気にいるものを残し、他は即座に廃棄)。これはディズニー顔と同じだと思いました。
復帰して1本目は感が戻らず、逆光でも素晴らしく撮れてたことを思い出し、知人を立てて撮ったところ、AEロックが甘く見事に失敗撮影、がっかり。でも、これがフィルムカメラの真骨頂なのでした。昔も今も。
1シャッター50~80円、失敗写真もおろそかにできません。普通に撮れる写真はそれに育てられてきたのですね。
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コメントありがとうございます。
非公開コメントなのでお名前も伏せさせていただきます。
フィルムカメラは独特の雰囲気があって、どちらも「写真」には違いないのですがデジタルとは違う表現方法と思っています。
カメラは修理できなくなるわ、フィルムは高騰するわでいつまで銀塩写真を撮れるかわかりませんが、末永くフィルム撮影続けていきたいですね。
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記事拝見させて頂きました。
入手した137MAですが、フィルム感度設定のリングが回らないのですが、同じ様な現象でしたでしょうか。リングを引き上げ様としても固くて無理そうです。何かアドバイスが有りましたらお願いします。
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czbell様
ご覧いただきありがとうございます。
すでに手放してしまったので記憶上のお話しになりますが、ASA設定リングはかなり硬かったですが、設定できないほどではなかったと記憶しています。コツというほどでもないですが、リングを引き上げる際にリングの一か所ではなくできるだけ円周全体を引き上げるようにするといいかもしれません。
たいしてお役にも立てず申し訳ございません。