一世を風靡したヤシカエレクトロ35シリーズ
ヤシカといえばかつてフィルムカメラで一世を風靡した光学機器メーカーだが、そのヤシカが1966年、「ろうそくの火1本で写る」とのキャッチフレーズとともに世に送り出したコンパクトカメラが「エレクトロ35」である。当時のライバル機がシャッタースピード優先または完全オート機が多い中にあって希少な絞り優先機であった。
明るい単焦点レンズと電子制御された自動露出機能でまたたく間に人気機種となったエレクトロ35はその後シリーズ化され、1975年の最終機GXまでに全世界で実に500万台を出荷したと言われる。本機CCNは、それまでの大柄なボディから一気に小型化された1970年発売のCCのマイナーチェンジ版。小型化しただけでなく特徴的なのはそのレンズで、シリーズ史上最も広角である35mmという画角でF1.8の明るさを実現した。現在でも35mmF1.8のレンズといえば、単体でもそれなり値の張るスペックであるが、普及価格帯のモデルにこのスペックのレンズを搭載したところ、メーカーの本気度が窺える。同時期に発売されたコニカC35を強く意識していたことは間違いないだろう。
今回、動作品ということで購入した個体は年代を考えれば十分に美品といえるものであったが、なにしろ50年前のカメラである。実際に動かしてみるまでは予断を許さない。バッテリーは4LR44という少し特殊な型のものだが、Amazon等で入手可能である。
バッテリーチェックボタンを押すと、無事フィルムカウンター部が黄色く点灯して一安心した。この機種は露出が適正でないとファインダー内にその旨を示す矢印が表示されるというギミックも搭載されているが、この一連の動作も全く問題なかった。
レンズを内部から見ると、絞りの形が変形しているかのようで一瞬焦ったが、調べてみるとこれが正常な形状らしい。円形絞りを見慣れているのでてっきり故障品かと疑ってしまった。夜景とか撮った場合は点光源の暈きが星型になりそうだが、それはそれで味のひとつだろう。メンテナンス前提で入手した個体であったが、結局メンテらしいメンテはほとんどせずに済んだ。
それではサンプルショットを投下しよう。今回使用したのはフジ業務用100。現像後D800でフィルムデュープし、PhotoshopとLightroomで諧調反転と調整を行ってデジタルデータ化した。
驚きの高画質。F1.8の明るさも心強い
YASHICA ELECTRO35 CCN (dupe by Nikon D800)
YASHICA ELECTRO35 CCN (dupe by Nikon D800)
YASHICA ELECTRO35 CCN (dupe by Nikon D800)
YASHICA ELECTRO35 CCN (dupe by Nikon D800)
YASHICA ELECTRO35 CCN (dupe by Nikon D800)
結論から言ってしまえば想像以上に良く写っていて驚いた。開放付近でも十分に精細な写りだが、F5.6くらいで文句のないシャープな画質となる。ゾーンフォーカスではなくレンジファインダーでピントを合わせているためでもあるが、被写界深度は深めに取ってあるようだ。
気を付けなければならないのはシャッタースピードの最速値が1/250までしかないことで、明るいシーンでは必然的に絞り込まないと露出オーバーとなってしまう。大口径レンズなのでボケの演出もしてみたいところだが、このため事実上ボケをつくるのは条件が揃わないとなかなか難しい。
とはいえ一方では大口径レンズだけあって少々暗いシーンでも手持ち撮影が可能なのは大きなアドバンテージ。難しいことをあまり考えずに普通に色々なシーンで写真を撮るということなら心強いカメラといえる。
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