大ヒットハーフカメラ、オリンパスペンEE-2とは
近所のリサイクルショップで、ジャンクとして転がっていたOLYMPUS PEN EE-2を発見した。だいぶ汚れていたが、チェックしてみたところではどうやら動きそうだったので”保護”することにし、購入して自宅へ持ち帰った。
ハーフカメラとは35mmフィルムを使うフィルムカメラのなかでも、「半分の面積」を使って撮影するカメラのことで、撮影可能枚数が通常の2倍となるのが特徴。具体的には、撮影する1画面に使う35mmフィルムの画面サイズが通常横36mm x 縦24mmなのに対して、ハーフカメラでは、横18mm x 縦24mmで1枚としている。但し1枚あたりのフィルム露光面は半分になるため、同一のサイズの写真が欲しい場合、引き延ばしを約1.4倍にする必要があり、その分画質が荒くなるというデメリットもあった。
ハーフカメラが登場した1960年代、フィルムの値段が当時の物価に対して高価であったために、倍の枚数撮れるハーフカメラは、経済的なカメラとして一挙に流行したが、1970年代になるとフィルムが安価となったことから次第にシェアを落としていった。
オリンパスPENシリーズはハーフカメラの元祖であり、前述の理由もあって大ヒットすることになる。EEシリーズはその中でも自動露出を採用したパンフォーカスタイプのカメラで、シャッターボタンを押す以外何の操作も必要なく撮影できる手軽さで人気であったという。
メンテナンスのポイントは「清掃」
さて”保護”したPEN EE-2は、シャッターが切れ、暗いシーンでは通常「赤ベロ」と呼ばれる赤いフィルムがファインダー内に出現しシャッターが切れなくなるという一連の動作ができている状態であった。この為、外観は汚れていても機能面は生きていると判断していた。今回のポイントは3つ。①ファインダーが汚れていて視界不良 ②露出計の稼働確認 ③レンズ汚れ清掃
①ファインダーが汚れていて視界不良
実際の撮影自体に影響しないといっても、ファインダーを覗くたびに視界が汚れているのはあまり気分がいいものではない。ファインダーの清掃には上部のパネルを外す必要があったが、この機種は精密ドライバーだけでパネルを取り外すことができる。詳しい手順はここでは割愛するので、知りたい方はgoogleなどで検索していただきたい。
パネルを取り外したら、ファインダーを覆っている黒紙を剥がし、無水エタノール等を少量含ませた綿棒などでファインダーを清掃する。カメラ前後と中間部にもガラス面があるのでもれなく行おう。
②露出計の稼働確認
「赤ベロ」が出ているので露出計は生きている可能性が高いとは思っていたが、分解ついでに確認してみた。レンズ周辺のセレン受光面に光を当てると、レシーバーの針(写真のシャッタースピード「125」文字の少し上のあたり)が光に反応して動くことが確認できた。光に反応してこの針が動けば、露出計は生きているということだ。
③レンズの汚れ清掃
次にレンズ内部の汚れを清掃しよう。今回使ったのは吸盤オープナーといわれる特殊道具で、ゴム製のリング状の器具。様々なサイズがあり、レンズリングや巻き上げレバーの飾り蓋等を回転して取り外すことができる。
今回の場合はレンズ部の解体に飾り輪を外す必要があるので、ちょうどよいサイズのオープナーを選択して、
外したいパーツに押し付けるように抑えながら反時計回りに回すと簡単に外すことが出来る。
レンズパーツ部分があらわになったが、レンズ後部も清掃するにはもう一段階分解しなければならない。見るとこのパーツには内側に小さなくぼみ(俗にカニ目という)があり、通常はこれを外すのに専用のカニ目レンチなどの工具が必要だが、試しのこの部分にぴったりのサイズの吸盤オープナーを使って回してみると、あっさりと取り外すことができた。
カニ目レンチを使った場合、物理的にカニ目部分を破損してしまうリスクが伴うが、吸盤オープナーならまずその心配がない為、解体にはまず最初に吸盤オープナーを使ってみることをお勧めする。これで前玉の清掃は完了。
この状態でシャッターボタンを押しっぱなしにすると、絞りユニットが空いてレンズの後玉へアクセスできるようになるので、このまま後玉を清掃できる。正確にはもう一か所、シャッターユニット前部のレンズ最後部へのアクセスができないのだが、ここへアクセスするにはシャッターユニット全体を分解しなければならなくなり難易度が飛躍的に上がる為、今回はここまででいったん様子を見ることにした。
外装の金属部分は軽めにコンパウンドで磨き、ボディの皮も無水エタノールで清掃したが、これは場合によっては張り替えるという手もあるものの、今回はこの独特の色がなんともPENらしいのでそのままにしておいた。実は機械式カメラのレストア作業の90%は清掃であり、多くの不具合はパーツの清掃で回復することが多い。問題は清掃する場所により、より深層部までの分解が必要となることだ。今回のように基本的な動作に問題のないような場合は意外に簡単にレストアできることもある。さてそれではおそらく実使用可能となった本PEN EE-2の実写実験をしてみよう。実写レポートはまた後日。
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