伝説の8枚玉ズミクロンを完全再現した「周八枚」
LIGHT LENS LAB(ライトレンズラボ)は、中国の投資家である周氏が発起人となり設立された光学メーカー。本製品35mmF2は、もともと投資家であった周氏が趣味で3年以上かけて進めてきた復刻プロジェクトを製品化させたもので、6群8枚のレンズ構成から通称「8枚玉」と呼ばれた初期のライカ「ズミクロン35mm F2」の完全再現を目指したものです。周氏がつくった8枚玉ということで、このレンズは「周八枚」と呼ばれるようになりました。
1958年発売のオリジナル第一世代ズミクロン35mmF2は、その卓越した描写能力や凝った造りから伝説のレンズとも謳われ、だいたい今だと良品レベルで70万円程度で取引されています。ライカの35mmはそうでなくともお高いモデルが多い中、さすがにこの値段になると私も含め一般人がそうそう手を出せるシロモノではありません。入手できたとしても、経年により本来の描写が損なわれている場合もあるでしょう。
そんな「高嶺の花」8枚玉ズミクロンの復刻を目指した本製品は、鏡筒デザイン、無限遠位置でのピントリング固定ギミック、さらには刻印文字体に至るまでその外観を再現したのみならず、オリジナルレンズのガラス硝材を研究し、近い原材料で製作することで、その描写に至るまでも完全再現しているということでたいへんな話題になりました。
但し、私的には外観でコレジャナイと思った点がふたつばかりあったことは一応記しておきましょう。レンズの取付け指標の赤ポッチがピンクの半透明人工ルビーに変わっていることと、漢字での「中国製」の刻印です。普通に赤いプラスチックのポッチと、英語で「MADE IN CHINA」でよかったんじゃないですかね。
ライカに装着した姿はズミクロンそのもの
M10に装着
それでは早速M型ライカに装着してみましょう。まずはデジタルライカであるM10。
オリジナルである8枚玉ズミクロンを手にしたことはありませんが、ショップで見かけたり商品写真をさんざん目に焼き付けてきましたので、もはやこの姿、レンズ銘の刻印を読まなければほぼズミクロンです。まあ、ズマロンと見間違えることもあるかもしれませんが。
専用レンズフードであるIROOAタイプのフードを装着すると、ますますズミクロンにしか見えません。ライカの純正レンズフードはこれまたびっくりするくらいの高値なので、私はサードパーティ製の復刻フードを使っていますが、復刻フードでもそこそこ高いし、品薄でもあります。
実はライトレンズラボからも、同型のIROOAタイプ復刻フードが発売されています。安くはないですが純正よりは安価なので、手にしてみてもいいかもしれません。
M4に装着
ライカM4は1967年に発売。8枚玉ズミクロンの登場は1958年、レンズ構成が変わり6枚玉となった第2世代が1969年に登場していますので、世代的に見るとこちらが近いかもしれませんが、M4に似合うのは第一世代8枚玉のほうでしょう。
時を忘れて見入ってしまいますね。デジタルライカに合わせるよりもこちらのほうがよりかっこいいと思います。M4のファインダーは35mmのブライトフレームも対応しているので安心して使えます。
CL(ライツミノルタCL)に装着
ライカCLは1972年発売。35mmズミクロンの第3世代「7枚玉」は1979年発売なので、世代的にはやはり第2世代「6枚玉」時代の機種にはなります。
CLは一般的な他のM型ボディに比べてかなりコンパクトですので、レンズが大きく見えてしまいますが、全体的なバランスが崩れるほどではありません。このボディに35mmを合わせたいなら、初代Lマウント版のサンハンズマロンなどのほうが似合っているとは思います。とはいえ純粋に銀塩でこのレンズをミニマルに楽しみたいなら、この組み合わせは最小サイズの部類に入るかと思います。
M10での作例と使用感
それでは今回はデジタルのM10に装着して試し撮りを行ってみましょう。まずは東京は外神田の神田明神へ。撮影した最初の一枚でもうわかりました。このレンズ、もの凄く良く写ります。
せっかくなのでほぼほぼF値開放にて撮影してみましたが、開放からピントの合った部分はシャープ、全体としては意外にもオールドレンズっぽくない現代的な写りという印象です。もっとも、オリジナルの8枚玉ズミクロンは当時あまりにもよく写るということで現在まで伝説的に語られているわけですから、1958年発売のレンズ(の再現)という先入観は持たない方がいいかもしれません。
35mmとはいえ開放値F2ということで、実はもう少しボケるのではないかと思っていましたが、思ったよりもボケは控えめです。自然といえば自然なボケ感でしょうか。
最短撮影距離は0.7mで、ピントをこの付近まで寄せると、背景はほどほどにボケてくれます。ただその際もすごくボケるわけではないですね。
いろいろとロケーションを変えて撮影してみると、このレンズはアンダー気味の描写が素晴らしく良く写る気がします。明暗差の破綻のなさとか、控えめながら諧調のなだらかなボケ方が時々はっとする絵を見せてくれますね。もちろん私、オリジナルの8枚玉ズミクロンなんて使ったこともないので描写の違いなんてわかりませんが、1950年代にこの描写のレンズが本当に存在していたのだとしたら、確かに驚愕の性能と言わざるを得ません。
こちらは駅のホームの立ち食い蕎麦屋さんですが、ほら、アンダー気味の描写がいい雰囲気じゃないでしょうか。
最後に愛猫のエイトを。明暗差のある晴れた日の窓際で最短撮影距離近くまで寄ったうえで撮影しましたが、こういった構図だと前ボケ、後ボケがわかりやすく発生して遠近感のある、そしてギリギリ白飛びと影の対比もきちんと捕えたショットになりました。
ライトレンズラボ社が、周氏の趣味から始まったプロジェクトだとしても、世界中のカメラマンにとって高嶺の花である8枚玉ズミクロンをそこそこ手に入れやすい価格で再現するという驚愕のアイデアを実現してしまったことには敬意を表するべきでしょう。こういうチャレンジングなことは日本のメーカーにはもうできないのでしょうか。本製品「周八枚」の描写は、高い次元でオリジナルと遜色のないレベルであると聞きます。ライカに対するリスペクトの表現には、こういう方法もあるのですね。
コメント
コメント一覧 (2件)
おもしろいレンズですね。
写りもイイとくれば最高じゃないですか!
私もチャイナのVILTROXのレンズにハマってます。
masaki様
お久しぶりです!お元気そうでなによりです。
VILTROX、ノーマークでしたが良さそうですね。チェックしてみます。
Mマウントあったらいいのに笑
私もたまにフジが恋しくなりますが我慢我慢。