駅舎以外本当に何もない五能線の秘境駅
無人駅と聞いてどのような想像をするでしょうか。多分、北の寒い地方で1日数本の列車、止まっても誰も降りる人はなく、木造の駅舎がただそこにぽつんと存在している・・・そんな姿を思い浮かべたとしたら、その想像通りの駅が青森にありました。青森県西津軽郡深浦町にある、JR東日本五能線の無人駅、驫木駅(とどろきえき)です。
ご覧の通りの海岸沿いに建てられた木造駅舎以外、周辺には何もありません。町も集落も近隣にはありませんので、この駅を利用する人がいるはずがないのです。一体何の目的でこの駅が現代において存在しているのか、全くわかりません。国道101号線から微妙に逸れているので、ここに駅があるという知識がなかったら確実に見落とすでしょう。実際、周辺には人の気配が全くありません。
撮影を始めようとしたその時、一人の女性に声をかけられました。聞けば大手新聞社の記者とのことで、この駅の取材をしているのだとか。彼女が言うには、取材のために度々訪れたのだがなにしろ誰も来ないので取材にならず、ようやく私が現れたのだとか笑。なるほど、本当にここは「秘境」なんだ。
どうしてこの駅を見たいと思ったとか、実際に見てどう思ったとか、ひと通り話をしました。話していて思ったのは、彼女もこの駅に特別な愛着を持っているらしいということ。実は五能線の駅数43個のうちのほとんどはすでに無人駅なので、単に無人駅というだけなら他にもたくさんあるんですね。ですがこの驫木駅は日本海の真正面にあるという過酷なロケーションの中、木造駅舎(調べたところ建築は1951年らしい)でありながらたったひとりで海を臨み、ただ何年もそこに存在し続けている、というストーリーを想像してしまうのです。
駅舎にも入ってみました。待合室のみですが思ったより劣化は少なく、メッセージノートなんかがあったりして一定の支持をされているのがわかります。ええ、私もこんな場所をわざわざ訪れる変わり者ですから、痕跡をなんとなく刻んでおきたい気持ちわかります。
そうこうしているうちになんと列車が到着しました。私、場所は入念に調べて訪問していますが、撮り鉄ではないので時刻表とか全く調べていませんでした。日に5本程度しか走っていない五能線の列車の姿を捕えようなんてはなから考えていなかったので、嬉しいサプライズです。なるほど、記者の彼女は列車の時刻にあわせてこの時間に張り込みをしていたわけですね。二人で慌ててカメラを構え、列車の後を追います。
期せずして駅と列車のツーショットを撮影することができました。ただ、列車は2021年から置き換えられたGV-E400系車両ですね。GV-E400系は結構モダンな外観なので、この駅には私が子供のころ見ていたキハ40・48形車両のほうが絶対お似合いだと思います。
もう少し取材を続けるという彼女を残し、私は次の撮影場所へ向かいました。誰もいない秘境の駅で人と出会うなんて不思議なこともあるものです。大手新聞社の記事ネタとしてこの駅の話が使えるかどうかわかりませんが、おかげで私にとっては忘れられない訪問となりました。
そしてまた驫木駅は今日もただそこに存在しています。誰を待つでもなく、何もないこの場所で。
コメント
コメント一覧 (2件)
やっと鉄道記事の登場ですね〜
記事も良いけど、写真も良いshotばっかりでステキです。
五能線にも乗って欲しかった。
またの鉄道記事を楽しみにしてますね。
francesco.h様、こんにちわ
いつもご訪問ありがとうございます。
今になってみれば五能線はとても魅力的な被写体に思いますが、
子供のころは単なる寂れた電車という認識でした。
言われてみれば終点の川部駅まで乗車したことは一度もないので
いつか乗車レポートもお届けできたらいいですね。