■購入してわかったGRⅢのあれこれ■
前モデルGRⅡの発売から約4年経った2019年3月、ついに後継機のGRⅢが発売された。デジカメ市場が冷え切った中、コンデジながら発売と同時に大ヒットしたGRⅢだが、このたびやっと導入に至ったので遅らばせながらレビューをしてみよう。
2013年発売の初代APS-C型「GR」を愛用していた私は、GRⅢの発売を横目に見ながらも購入を見合わせていた。というのも、初代GRは今でも十分現役で使えるカメラであり、慌てて買い換える必要性を感じていなかったからだ。技術スピードが速いこの分野において、およそ7年も前のカメラが使用に耐えうるというのは驚異的なことだ。
GRはこの大きさでセンサーは一眼機と同等のAPS-Cサイズを実現しており、私は通勤バッグに忍ばせて常に持ち歩くという使い方をしている。そういう意味では毎日一緒にいるわけだから、相棒と言っても差し支えない。なお2015年発売のGRⅡは初代GRからの変更点が少なくスルーしていた。
GRからGRⅡへの変更はいわばマイナーチェンジ、GRⅡからGRⅢへの変更はフルモデルチェンジに相当し、隙のない機種に生まれ変わった。発売後約1年が経過してしまったが、まだまだ初代GRでいけると思っていた私が結局はGRⅢにアップデートしてしまった理由と、そうは言いつつもいくつか気になった点をレポートする。
愛用していた初代GRと並べてみた。外観がほとんど変わらないためただ並べてしまうとどっちがどっちだかわかり辛いので、GRⅢには青リングを、初代GRには赤リングを装着しているが、青リングのGRⅢのほうが小さいのがよくわかるだろう。実は操作系も簡素化していて、ボタンやレバーが少なくなっている。物理ボタンが減少したことで操作性が犠牲になっているのではと危惧したが、そこは上手くできていて、わかってしまうと少ないボタンでもさほどのストレスは感じない。
基本的なスペックでいうとGRⅢはGR(またはGRⅡ)に比べ画素数がアップし、手振れ補正機能が付いて、タッチパネル化された。いいことだらけではあるが、その代わりフラッシュの搭載はなくなってしまった。この点評価はさまざまだろうが、私は初代GRを使っていてフラッシュ撮影をしたことは一度もなかったので、個人的にマイナス要素ではない。
②夜間撮影にも強くなった
初代GRでイマイチと思っていたのが高感度耐性の低さで、夜間撮影ではISOを最大値まで上げてもなお手振れを起こすことが少なくなかった。GRⅢではISO上限も上がり、ノイズも減少かつ手振れ補正機能も付いたので期待したいところ。
少しコントラストを強調してマットな風合いに仕上げてみたが、夜間なのに隅々まできっちり写っていて安定の高画質。まだまだ暗いシーンにも対応できそうだ。
手前の提灯にピントを合わせると、背景はほどほどにボケていい雰囲気。初代GRならISOの上昇とシャッタースピードの低下を防ぐためF値は開放にせざるを得なかったが、F5.6でもなんら問題なく撮影できた。これなら夜間の手持ち撮影も安心して使えそうだ。
③マクロにも強い
初代GRも寄れるカメラでテーブルフォトもそれなりにこなしていたが、不便だったのがマクロモードに切り替える必要があったこと。GRⅢでは特別モードを変えなくても最短0.1mまで寄れるし、マクロモードにするとなんと0.06mまで寄れる。このカメラでそこまでクローズアップ撮影をすることがあるかどうかは別として、いざというときに寄れるのは心強い。
カメラ自体も小さいので料理の撮影時も目立たなくて済むのはありがたい。35mmと50mm相当の画角にクロップ撮影ができるのも便利。GRⅢでは画素数も増えたので、35mmクロップで1,500万画素、50mmクロップで700万画素相当で記録できる。
もっと大胆に寄ることも可能だが、通常はこれくらい寄れれば十分だろう。
④ワイコンGW-3は使えるか?
褒め記事が過ぎるのでここからは苦言を呈しておこう。歴代GRにはオプションで21mm相当の画角になるワイドコンバーションレンズが用意されており、今回もGRⅢ専用のワイコン(GW-4)が用意されている。しかし、これまでもそうだったがこれを装着するためには別途装着用アダプター(GA-1)を購入する必要があるので、両方買うと約3万円程度の出費となる。超広角レンズを購入する費用としては決して高くないかもしれないが、初代GRで購入した同等のレンズ(GW-3)とアダプター(GH-3)は共通では使えないので、再び買い直さなければならない。GRとGRⅢでは画角は同じ28mmだが新開発のレンズを使っているので、ワイコンもそれに最適化した新しいものが用意された…と聞くとなるほどそうかとも思うが、しかし本当にGRⅢでは初代GR用のワイコン(GW-3)は使えないのだろうか?
実は写真のようにGRⅢ用アダプター(GA-1)には、物理的には初代GR用ワイコン(GW-3)が装着可能である。装着できるのであれば、写してみたくなるのが人情というものだ。
渋谷にオープンしたスクランブルスクエアを撮影。地上230mのこのビルは生半可な広角ではなかなか全貌を納めきれないが、GW-3を使って何とか全貌を納めることが出来た。
もう一枚、青山学院大学キャンパスにて逆光のショットを。どうだろう、フレアやゴーストが発生する場合もあるようだが、ちゃんと写っているように思える。四隅が若干ケラレているのはレンズ保護フィルターを装着していたからであり、これを外せばケラレは解消されることを確認した。中央の画質に比べ、画面端は画像が流れ、色収差も発生しているが、通常画面端に主題を置くことはないのでこれならこれで十分使えると思うのだがいかがだろうか。アダプターGA-1は購入せざるを得ないが、すでにGW-3を持っているなら、慌ててGW-4を購入しなくてもしばらく使いまわすという手もありではないだろうか。
⑤バッテリー消費は早過ぎ
すでに巷でよく言われているのでわかってはいたが、バッテリーの消費は本当に速い。レベルメーターが1本消えたらあとは体感として加速度的に減っていくので、予備バッテリーはほぼ必須と思ったほうがよい。とはいえ純正のバッテリーは約4千円、さらに別売りの充電器が5千円するので、せめて充電器くらいは本体に同梱してほしかった。Amazon等で互換品が販売されているので、あくまで自己責任にはなるがそちらを購入するのも手だ。もちろん、リコーへのお布施として純正品を購入するに越したことはない。
実は今回記事を書くにあたって、納得のいかないところがあれば遠慮なく指摘してやろうと思いながら試し撮りをしていたのだが、あらゆる点で正常進化を果たしていて逆に肩すかしを食らった。レビュアーとしては全く面白くもないが、純粋にカメラファンの目線からすると絶賛する以外の立場に立てない。あまり褒めすぎてもあれなので、ワイコンの件とバッテリーの件はひと言言わせてもらった。
28mm単焦点というスペックなので、誰にでも刺さるカメラではないとは思うのだが、スナップシューターとしてはすでに完成の域に達してしまったGRⅢ、あとはもうセンサーをフルサイズ化するしかないのではないだろうか。数年後どのような進化を果たしているか、今後も追いかけてみようと思う。
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