■F2.8スタートのズーム搭載コンパクトフィルムカメラ■
富士フィルムはフィルム製造メーカーという立ち位置もあり、デジタルカメラの優位性が決定的となった後もフィルムカメラの発売を粛々と続けていたメーカーのひとつだが、最後のフィルムカメラ「ナチュラクラシカ」の販売が完了する2012年より遡ること10年前、ナチュラシリーズの祖ともいえそうな意欲的なカメラを発売していた。
当時のコンパクトカメラはフラッシュを使うことを半ば前提とした機種が多く、F値は現在のレベルから考えても相当暗いものが多かったが、2002年発売されたコンパクトカメラSilvi F2.8は、ズームレンズを搭載しながらも広角端F2.8という明るいレンズを採用する。加えて広角側は24mmと広く、さらになんとシャッターボタンがボディの左右両側に1個づつ計2個用意されていた。これらは現在で言うところの自撮り(セルフィー)用の装備であり、実にこの時代に自撮り文化を先取りしていたのだ。
プラスチック製のボディは決して高級感のあるものではないが、背面に大型の設定表示用液晶画面のあるこのボディは、その後発売されるナチュラシリーズ初代「ナチュラクラシカS」の基型に採用され、この系譜は2006年発売される名機「ナチュラクラシカ」へと続くことになる。
それでは早速サンプルショットを投下しよう。使用したフィルムはフジSUPERIA X-TRA400と業務用100。現像後D800でフィルムデュープしデジタルデータ化後、Photoshopで階調反転をしたうえでLightroomで調整を行っている。
■広角24mmは魅力だが描写は期待値に届かず■
FUJIFILM Silvi F2.8 (dupe by Nikon D800)
玄人も唸る独自のスペックを持つSilvi F2.8だが、結論から言えばその描写は非常に厳しいもの。概ねズーム全域に渡る甘い描写は、最初オートフォーカスが不良なのかと思ったほど精細さに欠ける。本機に搭載されている遠景モードが一体何メートル先から使うものかわからずいろいろと試してみたのだが、結局のところどんな距離であっても特別描写が改善された感はなかった。
FUJIFILM Silvi F2.8 (dupe by Nikon D800)
FUJIFILM Silvi F2.8 (dupe by Nikon D800)
私はどんなカメラだろうが通常の撮影でフラッシュを使うことはまずないが、考えられるのはこのカメラ、おそらくフラッシュをキャンセルするとF値は開放かその付近で自動セットされ、結果的にますます甘い描写になるのではないだろうか。かといって開放からシャープな写りをするほどの高性能レンズでもないようで、せっかくのスペックを活かしきれないどころか完全に裏目に出た感じだ。
FUJIFILM Silvi F2.8 (dupe by Nikon D800)
小型軽量のズームレンズ搭載フィルムカメラという点に価値を見出したいところだが、肝心の描写がこれではなかなか評価し辛く、もしナチュラクラシカの代替機として入手を考えている方がいるとしたら、全く期待外れということになるので注意が必要だ。フィルムカメラで気軽に自撮りをして歩きたいという用途がもしあるのなら、そうした使い方なら便利に使えるかもしれない。
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