SONY α7 Nikkor-H Auto 2.8cm F3.5 1/100秒 ISO100
■一眼レフ黎明期の銘玉Auto 2.8cm F3.5■
NikonのF2に似合うオールドニッコールレンズを探していて、銘玉と名高い本レンズNikkor-H Auto 2.8cm F3.5を購入した。昭和35年(1960)年に発売になったこのレンズは、現代の感覚で言うとF値が暗めで平凡なスペックのレンズに過ぎないが、当時としては待ち望まれた一眼レフ用高性能広角レンズであった。
当時レンズ交換式カメラといえばレンジファインダー機が主流であったが、一眼レフ機Nikon Fの優位性を示すために企画開発されたのが本レンズである。このレンズの成功により、それまで困難とされていた一眼レフ用の24mm以下の広角レンズや、大口径広角レンズの設計に光明が見えたといわれる。
昭和35年といえば今年で58歳と実に私よりも年上ということになるが、カメラがまだまだ高級品であったこの時代のレンズらしく、金属製のボディは堅牢そのもの。購入した個体はその後のAi方式に対応させるためにメーカーによる改造が施されたAi改バージョンで、現在の最新デジタル一眼でも問題なく使用できる。経年による銅鏡のスレやキズはあるが、レトロなデザインは今見ても本当に素晴らしく、まさにオールドニッコールを代表する1本といえるだろう。
本来はNikon Fなどフィルムカメラで使いたいところだが、今回はマウントアダプター経由でα7に装着し撮影を行った。余談だがフルサイズセンサーを搭載するミラーレス機であるα7は、お手軽にオールドレンズを楽しむにおいて今だに最右翼である。見た目もとてもかっちょよい。
それではサンプルショットを投下しよう。
■周辺は甘いが中央は極めてシャープ。オールドニッコールの味を楽しみたい■
SONY α7 Nikkor-H Auto 2.8cm F3.5 1/60秒 ISO320
冒頭のショットと共に千葉県松戸市にある徳川家所縁の戸定邸を撮影した。F値は5.6か8と記憶しているが、広角レンズらしいシャープな描写は現代のレンズに全くひけをとらない素晴らしいもの。ここまで絞れば周辺部の破綻も目立たない。光の向きによってはややフレアが発生することもあるが、このくらいなら味の範囲内だ。
SONY α7 Nikkor-H Auto 2.8cm F3.5 1/1600秒 ISO100
こちらは近所の桜を撮影したもの。ピントの合った部分は極めてシャープで解像もすばらしいが、背景のアウトフォーカス部は二重ボケ傾向で表現としてもいまひとつ。これが許せるかどうかは意見が分かれそう。
SONY α7 Nikkor-H Auto 2.8cm F3.5 1/160秒 ISO100
愛猫のトラを開放F3.5で撮影。中央に位置するトラの描写は極めてシャープで申し分ないが、周辺の乱れは尋常でないレベル。オールドレンズの描写を楽しむにおいては許容できても、等倍で隅々まで描写のチェックをするような方にはお勧めし辛い。尚、本レンズの最短撮影距離は0.6mと現在の感覚から言うとかなり長いので、被写体に寄れないことによるストレスには慣れるしかない。モノ撮りというよりは風景などが適しているかもしれない。
本レンズNikkor-H Auto 2.8cm F3.5はニコンのレンズ史的に重要な1本であり、中央部の描写はシャープで現在のレンズに並ぶ性能も発揮する。一方では周辺部の破綻やボケの硬さはやはり昔のレンズなりであり、ある程度絞り込むことでかなり改善するもののここが許容できなければ手を出さない方が無難だ。とはいえ中古市場では結構リーズナブルに入手できるオールドニッコールなので、味を楽しむレンズとしてはおもしろい1本だ。
コメント