Nikon D800 Tamron SP AF28-75 F2.8 XR Di LD 1/60秒 F2.8 ISO2800
大口径標準ズームなのにリーズナブル
F2.8通しのズームレンズを大三元ズームと呼ぶが、その大三元でありながら実売価格が激安というので多くのカメラマンの支持を受けてきたタムロンのSP AF28-75mm F/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO(開発コードがA09番であることから、業界では簡易的にA09と呼ばれる)を購入した。発売が2003年と古いため、さすがに設計の新しい最近のレンズには絶対的な性能で見劣りはするが、古いもの=良くないもの、と割り切れないのがレンズの世界の奥深いところだ。D800とのタッグで撮影した冒頭の写真だが、どうだろう、背景の枯れ木のボケ具合が見事に幻想的なショットではないだろうか。
今回購入したのはモーター非内蔵で絞り輪のある旧タイプ。わざわざ選んでこちらを購入したのは、先日入手したF4での使用を視野に入れたからである。外観はこの時代のタムロンらしい飾り気のないデザインで、特徴らしい特徴もないので逆にどんなカメラと組み合わせても大きく外さない。モーター非内蔵の旧タイプA09は、現行のモーター内蔵タイプに比べオートフォーカスは遅いはずだが、稼働は少し煩いが動体でも狙わない限り速度に不満は感じない。F2.8通しの大口径レンズにしては全長100mm、フィルター径67mmと比較的コンパクトなのも好感が持てる。
描写は甘いが雰囲気重視なら選択肢としてアリ
新品でも実売3万円台と激安なのに、独特のふんわりした描写にはファンが多く、かつてはプロのカメラマンですら選んで使ったといわれるが、時代がデジタルになり、更に高画素になった今ではその描写は正直見劣りはする。全体的な写りとしては現在のレンズのようなシャープなものではなく、多分に薄いにじみのある写りかたをするので、これが独特のふんわりした雰囲気を醸し出すわけだが、開放では画面中央部はともかく、周辺部の画像の乱れは尋常ではないので、通常は2,3段絞ったほうが安定する。この時代のレンズの多くがそうであるように、本レンズもまた逆光に極めて弱く、フレアやゴーストが盛大に出る。手振れ補正機能もないのでいろいろな意味で今の時代ではあえて選ばなくてもよいレンズと思うのだが、これらを逆手にとる表現をしたいのであれば、なかなか楽しいレンズでもある。
それではサンプルショットを投下しよう。
Nikon D800 Tamron SP AF28-75 F2.8 XR Di LD 1/60秒 F2.8 ISO2800
F2.8開放で紅葉を撮影。手前のピントの合った部分と、背景のボケ具合が絶妙で立体感のある絵となった。例によって画面の四隅は線が流れてしまうが、そもそも主題を画面の隅に置くことは通常あり得ないので、私的には許容範囲だ。むしろノスタルジックな雰囲気でいい味を出しているともいえる。
Nikon D800 Tamron SP AF28-75 F2.8 XR Di LD 1/60秒 F2.8 ISO2800
最短撮影距離が0.33mmと短いのでテーブルフォトにも向いている。
Nikon D800 Tamron SP AF28-75 F2.8 XR Di LD 1/80秒 F2.8 ISO220
花を撮るのも得意で、ふんわりした写りと背景のボケが美しい。このレンズに限らず、タムロンは花を撮らせたら一級品。
Nikon D800 Tamron SP AF28-75 F2.8 XR Di LD 1/30秒 F8 ISO140
F8まで絞ればかなりカリッとした写りになるが、それでもキレキレにシャープという印象はない。やはりどちらかというと開放付近まで開けて背景のボケを楽しみたいレンズだ。前述の弱点とか、ワイド端が28mmスタートとか、いろいろと至らない点はあるものの、この値段でここまで遊べることを考えればコストパフォーマンスは高い。未体験の方は大口径ズームの入門用として一度手に取ってみてはいかがだろう。
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