Nikon F3を導入してから、マニュアルフォーカスレンズにがぜん興味が湧いてきた。オートフォーカスレンズでもマニュアルでピントを合わせることはもちろん可能だが、元々マニュアルフォーカスを前提として設計されたレンズはピントリングを回す感触が全く違うものだ。F3用に望遠系のマニュアルフォーカスレンズを物色していたところ、よく出入りしているカメラ店でたまたまジャンク扱いのAi Zoom-Nikkor 35-105 F3.5-4.5を発見、見たところ状態も悪くなく、安価だったこともあり購入に至った。
発売は1983年と昔のレンズだけあってデザインは結構レトロだが、F3に装着してみるといかにも昔のカメラ風なフォルムが逆に新鮮である。外装は金属製で、その後主流となる樹脂製のレンズよりもむしろ高級感があるが、その分重いので持つとずっしり感じる。またズーミングは現在一般的な回転式ではなく直進式となっていて、望遠側に稼働すると色とりどりの線が記されている。これはどうやら被写界深度の目安を表しているとのことなのだが、そのつもりで見ても正直あまりピンとこない。
Nikon F3 Zoom-Nikkor 35-105 F3.5-4.5
まずはF3で試し撮りをしてみたところでは、この時代のズームレンズの写りに過度な期待はもともとしていなかったものの、意外に普通に写るなあという印象だ。もちろん取り立てて高画質というわけではないのだが、少し前の高倍率レンズのような写りといえばいいだろうか。フィルム機で撮るとフィルムならではの味は残るが、あまりボケないのでオールドレンズっぽさは希薄だ。
Nikon F3 Zoom-Nikkor 35-105 F3.5-4.5
Nikon F3 Zoom-Nikkor 35-105 F3.5-4.5
ピントが合えばそれなりの写りだが、とてつもなく合わせにくいので注意というか覚悟は必要。先日購入したフォクトレンダーULTRON 40mmがマニュアルフォーカスレンズながら実にピントが合わせやすかったのに対し、こちらは開放F値が暗いためだろうか、かなり目を凝らしてもなかなか判断がつかないことが多い。
Nikon F3 Zoom-Nikkor 35-105 F3.5-4.5
最短撮影距離は1.4mと長くて使い辛いが、このレンズ実はマクロモードという機能を装備していて、レンズ絞り輪付近のMボタンを押しながら鏡胴を回すことで焦点距離が変わり、最短0.27mまで寄れる簡易マクロとして使うことができる。こちらはそのマクロモードにて撮影したサンプルショット。まあ、写りがどうのというよりも寄って撮ることも可能ということに付加価値を見出せそうだ。この機能のおかげで、このレンズ1本だけでも相当多様なシーンに対応できる。但し、繰り返すが写りそのものはそこそこといったレベルだろう。
Nikon D800 Zoom-Nikkor 35-105 F3.5-4.5
フィルム機で撮っていてもいまひとつわかりづらいので、次にD800に装着して撮影してみた。意外にもちゃんと撮れてはいるが、フルサイズF5.6付近のショットにしてはやはり背景はほとんどボケない。少し前の高倍率レンズか、コンデジっぽい写り方だ。
Nikon D800 Zoom-Nikkor 35-105 F3.5-4.5
D800でマクロモードを試してみた。寄って撮ることはできたが、ピントの山が掴み辛くいまいちしゃっきりしない絵となった。デジタル機でも使えないことはないが、現在のレンズと比べるとやはり性能は何世代か前のレベルと言わざるを得ず、使うならフィルム機のほうが相性が良さそうである。フィルム機でどうしてもレンズ1本で済ませたいという場合なら、活躍できるだろうか。
コメント