1980年発売のマニュアルフォーカスフィルムカメラ、Nikon EMを中古で購入した。同時期に発売されたF3がプロ・ハイアマチュア向けに絶大な人気を誇りその後20年間に渡って生産されたロングセラー機となったのに対し、ライトユーザーをターゲットとした廉価機という位置付けのEMは、当時ニコンの「質実剛健な玄人向け」イメージにそぐわず、あまり人気がなかったという。しかし小さくて軽いEMはリトルニコンと呼ばれ、ディスコン後に人気機種となったとか。
この時代のカメラはボディ側で絞りをコントロールできないので、レンズ側に絞り輪が付いていない現在主流のGタイプレンズは事実上使用できず、1世代前のDタイプレンズ以前の絞り輪付きでかつAi方式を採用しているレンズのみ使用可能だ。本来なら当時のAiレンズと組み合わせるべきであろうが、今回はたまたま所有していたDタイプレンズAi AF NIKKOR 50mm f/1.8Dを装着してみた。このレンズは発売が2002年なのでEMとは実に20年の時代差があるのだけれど、あまり違和感なく納まっている。なお外装は上下カバーおよび底蓋がエンジニアリングプラスチック製であり質感はイマイチだが、軽量化とのトレードオフなのでやむを得ない。
撮影モードは絞り優先AEのみという非常に割り切った仕様で、マニュアル要素は殆ど削られているが、まあ一般的な撮影シーンではさほどの不便はないだろう。なお本機にはボディ左側(左手側)に露出補正ボタンが装備されており、逆光の場合に使用できるものの、押せば+2として働くのみでしかも相当押しにくいのであまり使い勝手はよろしくない。
ひと通り試し撮りをしてみたところでは、ファインダーが視野率92%、倍率0.86で、現行のエントリー向けデジタル機よりよほど大きく見やすく好印象。ファインダー内部にシャッタースピードメーターの表示があり、絞り値によってメーターが可変することで撮影データを把握することが可能となっており、シャッタースピードが1/15以下になるとピッ・ピッと電子音が鳴り手振れの警告をしてくれる。だが一方ではこの警告音はOFFにできないので、静かな場所で鳴ってしまうと周囲から相当注目を浴びるだろうというおせっかいな仕様でもある。またシャッター音は軽めでチープ、そのわりにレリーズ時には結構なミラーショックがあるので、ホールドには十分気を付けたいところ。
比べてもあまり意味はないのだが、あえてD800と並べてみるとEMがどれくらい小さいか一目瞭然だ。しかもボディ重量は約460gなので、軽めの単焦点レンズを装着しても1kgを大きく割り込む。たまにはフィルム機を使ってみたいと思ったとしても、デジタル全盛の現在において撮影現場にフィルム機のみで挑むのは不安があるが、この小ささならカメラバッグにデジタル機と一緒に忍ばせておいてもいいと思える。
なんといっても本機は中古で3千円程度で買えるので、お手軽にニコンのマニュアルフィルム機を使ってみたいならおもしろい選択肢といえる。作例はまた近日中に投下できると思うので、ご興味のある方はしばしお待ち願いたい。
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