
近代日本美術史学の父、岡倉天心の思索の場
六角堂は茨城県北茨城市の五浦海岸にある六角形の建築物。1905年(明治38年)、日本の思想家であり近代日本における美術史学研究の開拓者である岡倉天心が、自らの居宅から1段下った断崖に建設・設計したもので、天心自身はこれを観瀾亭(かんらんてい)と呼び、思索にふけったといいます。

2011年、東日本大震災による津波により六角堂は土台部分を残し消失しましたが、地域のシンボルとして親しまれてきたことから管理者の茨城大学が中心となり復旧計画が浮上、2012年には異例の速さで再建が実現しました。現在一般見学者は建物の内部に入ることは出来ませんので、外から見学するかたちとなります。

生前は転居が多かった天心が、没するまでの最後の10年間の拠点としたここ五浦海岸は「日本の渚百選」にも選ばれており、「関東の松島」の異名を持つ景観地だけあって、ご覧のとおりの美しい景観を臨むことができます。この日は生憎若干の曇り空となりましたが、それでもまるで異界のような美しさです。

隣接する五浦観光ホテルの姿が見えますが、なんて言うかこのホテル、景観によく馴染んでいて邪魔になりません。

ちなみに六角堂は太平洋に突き出した断崖岩上すぐに建っており、この場所から撮影しようとすると広角レンズが必携となります。冒頭のショットは広角18mmにて撮影していますが、15mm程度の超広角レンズがあったほうがいいかもしれません。

敷地内には天心邸も残されていますが、現在の姿は風呂棟や客用の離屋敷、天心夫妻の居室が取り壊され、天心が暮らしていた頃の半分程度の規模となっているようです。また、建物内に入ることはできません。
アクセス
全景を撮影するなら五浦岬公園の展望慰霊塔からがお勧め

海岸に建つ六角堂の姿を俯瞰で撮影するには、近隣の五浦岬公園の展望慰霊塔から望遠レンズで狙うのがいいかもしれません。

展望慰霊塔からは園内にある平成25年公開の映画「天心」のロケセットになった日本美術院復元施設も見下ろせます。ここは現在建物内に入ることは出来ませんが、外からガラス越しに内部見学ができます。

そしてここからは六角堂の経っている五浦海岸の一画を上空から眺めることが出来ます。なるほど、この場所にある建築物、津波が来たらかなり危険な位置にあることがよくわかりますね。

確かに松島をも彷彿とさせる見事な景観です。六角堂の内部面積は9㎡と、ほぼ四畳半程度の広さでしかありませんが、簡素な造りで特に何もないので意外に広く感じるとも言われています。ここに籠って物思いに耽るのは、ある意味とても贅沢なことだったかもしれません。

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