最強のスナップシューター「GR」
いつでも鞄に、できればポケットに忍ばせておいて、シャッターチャンスが訪れた時にはさっと取り出して瞬間を記録する。しかも高画質で。そんな便利なカメラをずっと渇望しているのは私だけではあるまい。現在ではスマホがその役割を担っている場合が多いと思うが、いくら高性能になってきたとはいえやはりスマホのカメラではもの足りない。フィルム全盛の80年代よりそんなスナップシューターとして絶大な支持を得てきたコンパクトカメラのひとつがリコーのGRシリーズ。カメラと言えばデジタルが当たり前となった現在も脈々と続く人気シリーズである。
GRは2005年デジタルカメラに形を変え、2013年には大型APS-Cセンサーを搭載した現行シリーズが誕生。2015年に後継機GRⅡが発売されたが、今回導入したのは2013年モデル。1世代前とはいえ基本構成は大きく変わっておらず、現在でもAPS-Cセンサーを搭載したカメラでは最小の部類に入る。このサイズで一眼機同等の画質が撮れるカメラはそう多くはない。
外観はご覧の通りの無骨でそっけないものだが、実はフィルム時代からこのデザインは大きく変わっていない。ほとんどの操作は片手で可能となっており、とにかくシャッターチャンスを逃さないことに最適化されたデザインだ。操作性はこの機種独特のものがあり、人によっては馴染めない可能性が高く、私も最初触った時はなんて使い辛いカメラかと思ったが、わかってしまうと印象がガラリと変わり、頼れる相棒へと変化するのだ。良くも悪くもそこまで到達できる人向けのカメラと言えるだろう。尚ボディはマグネシウム合金製であり、道具としての信頼性も高い。
愛用のRX100と並べてみるとさすがにGRが大きいが、横に長いが縦はさほどの違いがない。長い部分はグリップだから、むしろボディに凹凸のないRX100より持ちやすいくらいだ。ズームレンズを搭載するRX100に比べて28mm相当の単焦点レンズしか搭載しないGRはすべてにおいて有利というわけではないが、クロップで35mm、47mm相当として撮影することが可能。但し、その場合は有効画素数が1,000万画素相当、500万画素相当までそれぞれ減少する。
それではサンプルショットを投下しよう。尚、すべてのショットはLightroomで現像・補正してあるため、その点考慮いただきたい。
歴史に裏打ちされた玄人向けコンパクトの決定版
こちらのショットは35mmクロップにて撮影。センサーの一部を切り取ったかたちとなる為この場合画素数は約1,000万画素相当として記録されることになる。これは28mmで撮影して編集の際にトリミングするのと同じことなのだが、トリミング前提で広範囲を撮影するのと必要な画角を狙って撮影するのではやはり気分というか心構えが違うというものだ。完全逆光のショットでありゴーストもフレアも発生しているが、クロップ時もRAW記録はできるので、その後の補正の自由度が変わらないのはありがたい。
こちらもたまたま35mmクロップにて撮影。夕刻で薄暗い時間帯でF2.8開放値でのショットであり、手前の花にピントを合わせたので背景は程よくボケてくれた。APS-Cで広角28mmでのF2.8なのでそれほど派手にボケるわけではないが、工夫次第ではこれくらいの演出は可能。
こちらは夜間の撮影でISO5000のショット。高感度耐性を試すものであるが、結論から言うと高感度はまずまずといったところで得意とはいえない。もちろんAPS-Cという大型センサーなりの耐性はあるが、なにしろ数年前の画像処理エンジンであり最近の同クラスのカメラと比べるとやはり見劣りはしてしまう。とはいえLightroomなど現像ソフトでの後処理でかなり補正できるので、RX100など1インチセンサー機に比べればアドバンテージはある。
十分に光量のある場合はローパスレスセンサーだけあって精細な描写をする。近距離での撮影はいちいちマクロモードに切り替えなければならないのは面倒だが、撮影モードをオートにしておけば10cmまで寄れるので、通常はオートモードにしておくという手もある。
今回、主に普段持ち歩くコンデジとしてRX100との比較で言ってしまえば、撮影した絵を比べてみるとRX100よりもGRの描写は線が細かく精細感のある描写で、画質はやはりセンサーサイズが大きいGRにアドバンテージがあるものの、ただRX100も十分に高画質であるうえ光学ズームを搭載しているという強みがあり、どちらが優れているということではなくどちらを重視するかという選択の問題だろう。しかしながら、より高速で、より堅牢で、より高画質ということになると、軍配はGRにあがるかもしれない。
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