FUJIFILM X-T20 FUJINON XF35mmF1.4R F2 1/80秒 ISO400
Xマウントの神レンズ、35mmF1.4R
FUJINON XF35mm F1.4 Rは富士フィルムのXシリーズがローンチされた2012年当初からラインアップされていた標準単焦点レンズ。全体的にコンパクトながら光学的に妥協なくF1.4の明るさを実現しているのが特徴である。発売当初は比較的お求めやすい価格で撒き餌レンズとしても人気であったが、後の価格改定により現在はミドルクラスとして鎮座している。
多くのカメラメーカーにおいて、俗に「神レンズ」と呼ばれる価格の割に著しく描写性能の優れたモデルが存在しているが、富士フィルムXシリーズにおいて、多くのユーザーから「神レンズ」の称号を得ているのがこのXF35mmF1.4Rである。冒頭のショットは開放から少し絞ってF2で撮影しているが、ピントの合ったボトルのシャープな描写から流れ込むような前後のぼけ具合のナチュラル感がすばらしい。
さて、本レンズはXシリーズの単焦点レンズ群ではミニマムサイズではないものの、F1.4として考えれば十分にコンパクト。一方で全体的に高級感は控えめ。特徴的なのは同梱のレンズフードで、今時珍しい角型となっている。ちなみにレンズフードに被せるかたちでゴム製のフードキャップも付属するが、カパカパなので持ち歩くと高い確率で紛失が懸念されるのには注意が必要だ。
X-T20に装着した姿は昔のフィルムカメラを彷彿とさせ、クラッシックで実に趣深い。シリーズにはF2ながら同じ35mmで防滴防塵仕様ながらもっと値段の安いXF35mmF2R RWも存在しておりどちらを選ぶかは悩みどころだが、描写性能を優先するならF1.4を押さえておくのが賢明だろう。
フォーカスは全群繰り出し式でピントを合わせる度にカカカッと今時珍しいくらい音が大きく、最新のボディで使えばそこまで気にならないとはいえスピードも決して速くはない。総じて一昔前のレンズのような使い心地となるが、そうした欠点を補って余りある描写性能は他のレンズでは代え難いものである。
それではサンプルショットを投下しよう。
繊細な描写は噂通り。Xマウント必携の1本
FUJIFILM X-T20 FUJINON XF35mmF1.4R F1.4 1/50秒 ISO500
一般的に大口径レンズでは開放値での描写は甘いが、本レンズはAPS-Cのせいか開放でも比較的扱いやすい。ポートレートチックな使い方をしたい場合は思い切ってF1.4のまま使ってみるのも面白そうだ。
FUJIFILM X-T20 FUJINON XF35mmF1.4R F2 1/550秒 ISO200
もちろんセオリー通り2段程度絞って使うとよりシャープさが際立ちしっかりとした描写となる。また、最短撮影距離が28cmとかなり短いのもポイントで、テーブルフォトとか花撮りや小物撮影も難なくこなす。
FUJIFILM X-T20 FUJINON XF35mmF1.4R F4.5 1/125秒 ISO400
F4.5まで絞り背景のぼけ具合をコントロールしたショット。こうした意図を反映させやすいのが大口径レンズの醍醐味といえるが、本レンズの面白さはまさにこの点にある。ズームレンズでも大口径のものであればこうした演出ができるが、得てしてそうしたレンズは相当高額であることを覚悟しなければならない。
FUJIFILM X-T20 FUJINON XF35mmF1.4R F8 1/500秒 ISO200
こちらはF8まで絞ってパンフォーカス撮影をしてみた。ガラス越しのショットにつきLightroomで若干の調整を施したが、精細な写りは風景撮りも問題なさそう。
FUJIFILM X-T20 FUJINON XF35mmF1.4R F5.6 1/50秒 ISO1250
もう一枚風景のショットを。こちらはF5.6だが植物の葉の描写の細かさや、水面の写り込みの表現などが見事な一枚。35mm換算53mm相当という焦点距離は、個人的にはもう少し広角のほうが好みではあるが、それ以外は被写体を選ばないオールラウンダーの1本として非常にカバー範囲の広いレンズといえる。
本レンズは卓越した描写性能が魅力の標準単焦点レンズであり、富士フィルムXシリーズユーザーならぜひ一度は使ってみるべき1本である。これまでXマウントレンズは数本使ってきたが、本レンズはその中ではトップの描写力であることは疑う余地もなくすっかりお気に入りとなってしまった。しばらくは使い倒してみようと思う。尚付属の角型フードも悪くはないが、レンズファインダー用の丸形フードなどがこのレンズには良く似合うのではないだろうか。
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