
奇岩怪石が塔のように並立する、南会津最大の景観地
塔のへつりは、福島県南会津郡下郷町にある景勝地。南会津東部を流れる河川が形成する渓谷で、百万年もの歳月をかけて浸食と風化を繰り返し、柱状の見事な断崖が造られました。1943年には国の天然記念物に指定されています。

「へつり」とは福島県会津地方の方言で「川に迫った険しい断崖」「急斜面」という意味。その名の通り、高さ約70メートル、幅約200メートルと言われる断崖が連なり、奇岩怪石が塔のようにそびえ立つ景観は圧巻です。

ここは景観を外から眺めるだけでなく、橋を渡って実際に岩の窪みに入っていけるのがポイント。平日の午後となったこの日、観光客の姿はまばらで、ゆっくりと見て回ることが出来ました。
断崖内部を見学してみる

「ふじみはし」と名付けられた吊り橋を渡って断崖側へ向かいます。一般的な吊り橋から受けるイメージよりもしっかりした橋ではありますが、一度に30人以上渡橋しないよう注意書きがありました。

ちなみに阿賀川の上流側の眺めも美しいです。川なのに水の流れがほとんどないので、どっちが上流なのかわからなくなりますが、多分こっちが上流です。

一見、断崖の窪みをつたってずっと先まで行けそうにも見えますが、実際は経年による崩落等のため、吊橋を渡している周辺以外は立ち入り禁止となっています。

橋を渡りきり、窪みをつたって断崖の内部へ足を踏み入れます。

立ち入れる窪みはそれほど大きなものではなく、足元も狭いので気を付けていないとうっかり川に落ちてしまいそうになります。

しかし断崖側からの眺望もまた格別で、自然の造形に包まれるような感覚はなかなか体験できないもの。これ人が少ないので成立する観光コースですが、仮に人であふれるようになったら、とても危なくてここまで公開することはできないでしょう。
虚空蔵菩薩と断崖マップ

最奥の石段を登った所に虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)が安置されています。こちらも洞窟のように窪んだ断崖の一画につくられていて、大同2年(807年)に坂上田村麻呂により創建されたと伝えられています。

ここにそれぞれの塔岩の名称が書いてあります。位置的に、橋が架かっている場所が図の左から2番目「ごまとう岩」付近でしたので、実際の景色と見比べながら数えると真ん中あたりの「やぐら塔岩」あたりまでは断崖を確認できるのですが、それより右側にあると書かれている断崖の姿は木々に覆われてしまって見ることができません。冬場でしたらひょっとして葉が落ちて、岩石の姿が見えるものでしょうか。
美しさと脆さが同居する過渡期の風景
塔のへつりは素晴らしい景観地ですが、同時にいろいろと思うところもありました。

断崖の凝灰岩は削れて美しいが、それは脆いということでもある
実際に崩落の危険性があることから、すでに立ち入ることのできるエリアはごく限られた空間のみとなっています。
混雑を前提につくられていない観光導線は、仮に観光客が増えたら規制が入りそう
吊り橋は人数制限あり、窪み自体大きくはないので一度に大人数を収容できません。観光客が増えた瞬間に、少なくとも窪みに立ち入ることができる仕組みには制限がかかるでしょう。
木々の成長が断崖を覆い始めていて、断崖の姿自体いつまで見られるかわからない
右岸側の断崖はすでに半分以上が樹木で隠れてしまっていて、10年後には今見えている断崖が見えなくなる可能性は否定できません。伐採しようにも、景観保全と生態系保護の板挟みで簡単ではないでしょう。
これらのことから考えて、この場所が未来に渡って、この同じ姿が残る保証はないのではないかと思うのです。現在の姿はいろいろな偶然が重なって奇跡的に成立しているもの。観光地として整いすぎていない今が、最も美しいときなのではないか。「美しさ」と「危うさ」を両方感じながら、今の塔のへつりの密度に思いを馳せる旅でした。
アクセス
周辺に駐車場が2か所くらいありますが、シーズンによってはカラーコーンで仕切られ利用できなくなっていて、その場合は突き当りのお土産店の駐車場に停めることになります。料金は500円程度ですのでお布施と思って支払ってあげましょう。尚、会津線塔のへつり駅から徒歩約5分ですので、鉄道を利用することも可能です。



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