
令和の新製品ハーフカメラを試し撮り
令和の時代に登場したまさかのフィルムカメラ(しかもハーフカメラ)、PENTAX 17の試し撮りをしてみましょう。

なにしろハーフカメラなのでフィルム1本あたりの撮影可能枚数が通常の倍ということで、試し撮りに時間を要してしまいました。36枚フィルムだと72ショット撮れるので、フィルムカメラで72ショットはもう永遠にも近い枚数です。

今回は36枚フィルムを1本、24枚フィルムを1本の計2本都合120ショット(!)から厳選してシーン別に作例を見ていきたいと思います。
日中は基本AUTOモードが無難
まずは基本となるAUTOモード。シャッターを押すだけでパンフォーカスの絵が撮れるモードです。

被写界深度で見かけ上ピントが合っているかのように見せているだけなので、正直画質には不安があったのですが、どうでしょうまあまあ良く撮れているのではないでしょうか。

レンズはいわゆるトリプレットタイプといわれる3群3枚構成のもので、構造がシンプルでかつ画質に定評があります。これに最新のHDコーティングを施しているとのことで、逆光にも強くゴーストやフレアも感じません。

ハーフサイズの1枚を引き延ばしてもそこそこ鑑賞に耐えうる画質です。

近距離の被写体にはPモード
AUTOモードだと1m以内の被写体にはピントが合いませんので、その場合はPモードでゾーンフォーカスを使ってピントを合わせに行きます。

実はこの手のフィルムカメラで最短撮影距離25cmまで寄れるカメラはほとんどありません。これだけ寄れれば、テーブルフォトとかモノ撮りにも挑戦したくなります。

頑張れば桜の花のアップも撮れてしまいます。この近さだとピント合わせ(というか距離合わせというか)は結構シビアですが、何枚かチャレンジして成功したのがこちらのショットになります。

テーブルショットもちゃんと撮れますが、近距離のショットは暗く写りがちなので、露出補正を使うかスローシャッターモードでもいいかもしれません。
暗い場所ではスローシャッターモード
暗いシーンではシャッタースピードを落としたいのでスローシャッターモードにします。モードダイヤルの月マークがこれにあたります。このモードでもピントをゾーンフォーカスで合わせなければいけませんので忘れないように。

とはいえ、結局カメラのプログラムAEが勝手に判断してしまいますので、実際シャッタースピードがどこまで低下しているのかは確認することができません。むしろどこにピントをあわせるか、に集中したほうがいいでしょう。

暗いシーンといってもいろいろかとは思いますが、比較的明かりが多いような場合はちゃんと写ってくれることが多いようです。写真は新橋の飲み屋街ですが、店の明かりを被写体にして撮るのはひとつの成功のコツかもしれません。

いずれにしても、フィルムをセットして巻き上げて撮る、撮りきったらお店に現像をしてもらってはじめてどう撮れていたのかがわかる、場合によっては更にそれをデジタイズするという、今の時代では考えられないようなめんどくさい写真体験を経験することができる新製品ではあります。
PENTAX 17はフィルム文化の継承機
さてフィルムを2本消費した時点で決めつけは出来ませんが、このカメラで画質がどうこう語るのは野暮なような気がしています。ゾーンフォーカスのフィルムカメラですので、そこから出てくる絵はそれ以上でもそれ以下でもありません。ハーフにしては頑張っているなとは思いますが、被写界深度で見せているだけのPENTAX 17の絵はやはり甘いし、フィルムカメラをちゃんと使ったことのある人なら意図通りの絵に撮れないもどかしさが残るでしょう。
参考までにハーフカメラでは世界一高画質と思っているオリンパスPEN Fの最近撮った写真と比べてみてください。

令和の時代に生まれたフィルムカメラなので、昭和のフィルムカメラより画質は向上しているのだろうなどとは思わないこと。このカメラは昭和の時代にあったフィルムカメラそのものでしかありませんので、昭和の中古フィルムカメラを2~3万円で購入しても撮れる絵は大きく違わないでしょう。

となると、実売8万円前後というこのカメラの意義は何でしょうか。それは多分フィルムカメラという文化の継承、です。スマホでいつでも誰でもキレイに撮れる写真ではなく、前述しためんどくさい写真文化を後世に継承する存在がPENTAX 17なのです。
そんな文化の継承が必要なのか、それはみなさんひとりひとりの考え方に委ねようと思います。ただ確かなのは、それを継承しようとした企業が存在したということ、それを継承するカメラがあること。旭光学、もといリコーイメージング、あっぱれではないでしょうか。

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