
令和に新発売されたフィルムカメラ PENTAX 17とは
2024年7月、まさかのフィルムカメラの新製品がPENTAXから発売されました。このカメラは、2022年12月に発表された「PENTAXフィルムカメラプロジェクト」から誕生したモデルで、PENTAXでは実に21年ぶりのフィルムカメラです。

確かではありませんが、トイカメラ以外で最後まで銀塩コンパクトカメラを生産していたのは富士フィルムではなかったでしょうか。調べてみると高級コンパクト「クラッセW」の生産終了が2014年とのことですので、そこからカウントするとこのカテゴリのいわゆる高級銀塩コンパクトカメラの国内登場は約10年ぶりということになります。

令和の時代に出現したフィルムカメラの新製品ということで大きな話題となり、一時は生産が間に合わないほどの人気でしたが、発売からしばらく経ちぼちぼち中古品も目にするようになりましたので、遅ればせながら購入してみました。

裏蓋を開けるとわかりますが、このカメラ、なんとハーフサイズカメラなのです。
ハーフサイズカメラってどういうこと?
ハーフサイズカメラとは一般的な35mmフィルムの1コマ(36×24mm)を2分割して撮るハーフサイズフォーマット(17×24mm)のカメラで、名称の「17(イチナナ)」はこのフォーマットサイズにちなんだもの。
かつて1960年代初頭はフィルムといえばまだまだ高価なものであったため、撮影枚数が倍になるハーフサイズカメラは一定の需要がありました。しかしながら記録面積が半分になるのでどうしても画質面では不利であったことや、その後フィルムの低価格化が進んだことでフィルムを節約する必要がなくなったことで徐々にその存在意義は失われていったのです。

そんな懐かしのハーフサイズカメラ、私もこれまでも何台か使ったことがありますので、当時のレポートを振り返ってみましょう。



レンズ交換式であるOLYMPUS PEN FTは他の一般的なハーフカメラと比べてダントツの高画質ですがこれは別格として、概ねコンパクトな筐体に深い被写界深度を生かしたパンフォーカスのスナップ撮影用途というのが特性。ちょうど現代のスマホ写真のように、いつも持ち歩いて何か気になるものがあったら撮っておくというライトな使い方が主流のカメラでしたので、操作の簡単なオート撮影のモデルが多いという印象です。
デザインは秀逸、質感はまずまず

それでは外観をチェックしていきましょう。特徴的なのはカメラ中心部に位置する縦型のファインダー。ハーフカメラなのでデフォルトでカメラを構えると縦位置の写真が撮れるので、ファインダーも縦型というわけです。

軍艦部と底面はマグネシウム合金製で、色合いはチタンっぽいテイストの渋いシルバー色。軍幹部に並んだダイヤルと、ファインダー上部にプリントされたかつての旭光学のエンブレムなど、一見してかっこいいと思わせる秀逸なデザインと思います。
一方でこれらのダイヤルのクリック感は軽すぎて、何かの拍子で意図せずダイヤルが回ってしまう可能性を否定できません。

あとフィルム巻き上げレバー横の撮影枚数カウンターは、小さすぎて老眼の私には全く読めませんでした。もう少し大きくするとかLEDで内部が光るとか、何か工夫が欲しかったところです。
全体的にデザインは秀逸ですが樹脂パーツが多いせいか高級感までは感じられず、実売約9万円という価格に見合っているかと言えば正直微妙なところ。もうひと手間、ひと工夫あれば受ける印象ががらりと違ったであろうことを考えると実に惜しいと思いました。
撮影モードはとりあえず3つを覚えよう
PENTAX 17はプログラムAEを搭載する電子シャッター機ですが、いわゆるマニュアル撮影は出来ないものの、撮影モードダイヤルと露出補正ダイヤルを装備。ピントはゾーンフォーカス方式で、被写体とのだいたいの距離を目測で判断して絵柄を合わせるという、かつてのコンパクトカメラではよく採用されていた方式ですが、これによりピント操作も可能となっています。

撮影モードは7種類あり、それぞれのシーンで最適な撮影結果が得られるようにプログラムされています。大別するとAUTO、フラッシュキャンセルグループ(文字が白色)、フラッシュ強制発行グループ(文字がオレンジ)に分かれていますが、実際のところフラッシュ撮影はあまり使う機会がないと思いますので、個人的には①AUTO、②白いP、③白い低速シャッターモード(月のマーク)の3つを覚えておいて、それぞれのシーンで適切なものを選ぶのがよいと思います。

まずは基本となる①AUTOモード。シャッターを押すだけでパンフォーカスで撮影できるというものでたいへん便利なモードですが、このモードでは目安として1メートル未満の被写体にはピントが合わないということと、ゾーンフォーカスリングを回しても一切反映しないことは覚えておいたほうがいいでしょう。晴天の屋外など明るいシーンではF値が上昇して被写界深度が深く取れますのでAUTOがお勧め。
②白のPモードは少し暗いシーンや1メートル未満の被写体を撮影する場合にセットし、このモードではゾーンフォーカスが効きますのでしっかりピントを合わせて撮影しましょう。またAUTOでは暗くなってくると意図せずフラッシュが光ってしまうおそれがあるため、光らせたくない場合も白のPモードが適しています。
夕刻や暗めの室内は③白の低速シャッターモードにすれば、シャッタースピードが低下しますので適正露出を得られる可能性が高いです。実際のところどこまでシャッタースピードが下がるのかはコントロールも確認もできませんので、あくまで撮影が成功する可能性が高まるとしか言えませんが、これは想像ですけれども1/8とか1/4とか手持ち撮影が不可能なくらいまでは下がらないのではないかと思っています。こればかりは実験してみるしかなさそうなので、後日あらためて試してみたいと思います。

個人的には絞りが解放に近づくBOKEH(ボケ)モードも面白そうですが、ハーフカメラで解放F値3.5のPENTAX 17でボケの写真を撮るのはかなり難しいのではないかと思います。ちなみにオレンジのPモードとオレンジの低速シャッターモードはフラッシュが必ず光りますので、間違わないように注意してください。
安価ではないが試してみたいと思わせるカメラ

以上、購入したばかりのPENTAX 17をざっくり観察してみました。
メーカーはこのカメラを、フィルムカメラを使ったことのない若い人が初めて手にするフィルムカメラという位置づけで企画したと聞きましたが、それにしてはまず実売9万円という価格にミスマッチは感じます。しかしながら基本フルオートの電子カメラに、撮影モードとゾーンフォーカスを装備したことで撮影者の意図を反映させられそうな余地を残したところは好感が持てました。
決して安くはないですが、令和の新製品フィルムカメラでルックスも好み、かつちょっとマニアックなところも垣間見え、試さずにはいられないというのが今の気持ちです。早速試し撮りを開始しますので、近々撮影結果のほうもレポートさせていただきます。

コメント